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群馬県、法改正求める
温泉ブーム「待った」 乱開発で枯渇の危機 
  東京朝刊
空前の「温泉ブーム」のなか、温泉資源の保護を求める声が出始めた。草津、水上、伊香保など有名温泉地を抱える群馬県が温泉の枯渇を防ぐための法改正を環境省に求めた。環境省も学識経験者を集めた「温泉行政の諸課題に関する懇談会」で、温泉開発の規制の在り方や法整備などについて幅広く検討していくことになった。

草津温泉の湯畑。温泉資源の保護を求める声は高まっている=群馬県草津市

環境省によると、平成16年度に温泉を備えたホテルや旅館は全国で1万5332施設。宿泊施設がほぼ頭打ちとなる一方で、近年の「温泉ブーム」を支えているのが日帰りの公営温泉などの公衆浴場だ。全国で約7300施設あり、3年度(3576施設)から倍増している。

竹下内閣が進めた「ふるさと創生」事業で温泉施設建設が地方自治体でブームになったことや、その後も自治省(当時)が財源捻出(ねんしゅつ)を後押しし、地方単独の公共事業を景気対策として進めたことが、温泉急増に拍車を掛けた。都心でも温泉施設の建設が進み、東京都では昨年度、温泉掘削が11件許可された。

ところが、日帰り用などの温泉施設が増えることで問題も表面化している。


温泉掘削はより深く、より奥へと向かっており、5年度以降、掘削許可が下りた5111件のうち、1000〜1500メートルの深さまでの掘削は1348件、1500メートル以上の掘削は1048件にものぼっている。とくに14年度以降は大深度掘削が過半数を占めており、泉質の変化など温泉資源への影響を懸念する声もあがっている。

掘削により源泉数は増加し、温泉の湧出(ゆうしゅつ)量は昭和38年度の約3倍にも上る。現在(平成16年度)は毎分271万リットルが湧出している計算だ。このうち自然湧出量は11年度をピークに5年連続減の77万5642リットルで、残りは動力でくみ上げている。

5年度に許可が出た約500の源泉について、環境省が調査した結果、8つの源泉が枯渇していることが判明。自然湧出していた36の源泉で湧出力が衰え、動力を使ったくみ上げに変わり、もともと動力でくみ上げていた4源泉も動力の馬力を上げるようになった。湧出量には明らかに陰りが見え始めていており、「このままでは近い将来、温泉資源は枯渇する」と、温泉関係者の危機感も強まっている。 

地方自治体の活性化を目的とした温泉開発は岐路に立たされているといえそうだ。



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