「キレイに暮らしたい。でも、掃除は面倒」。こんな声に応えるように、掃除の手間を簡略化させた生活機器が急速に広まっている。家電製品をはじめ、これまでは商品化が遅れていた便器や浴槽など住宅設備機器まで、「お手入れ不要」をうたった新商品が次々に登場。家庭内の生活機器すべてが「手入れ不要」になる日も近い!?
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人気が高いサイクロン方式の掃除機。売り場では、手入れが楽な商品を求め、消費者が品定め=東京都新宿区のヨドバシカメラ新宿西口店 |
新素材の便器
「日本初の全自動お掃除トイレ」。松下電工が12月に発売するタンクレストイレ「アラウーノ」は、「ブラシを使った便器内の掃除が年4回で済む」のが売り物だ。
一般的な便器の素材は陶器だが、水あかがつきにくい有機ガラス系の新素材を開発。これに泡状の洗剤と水流の勢いを組み合わせ、掃除回数の大幅な削減を実現させた。
同社の調査によると、ブラシを使ったトイレ掃除は年平均104回で、主婦が最も嫌う掃除がトイレ掃除という。開発担当の酒井武之さんは「ブラシをトイレ内に置いておくだけで不潔と考える人もいる。ブラシを使わなくても済む、掃除を完全自動化した便器の開発を目指したい」と話す。
また、同社製の浴槽に取り付けると、洗剤を噴射して浴室内の汚れを落とすハンドスプレーも12月に発売する。住建商品営業企画部では「風呂掃除の際、しゃがむ姿勢を負担と考える人は約75%もいる。立ったまま掃除ができ、浴槽をスポンジでこすり洗いする必要がなくなり、高齢化社会にも対応できる」という。
掃除いらずの掃除機
掃除機で最近、人気が高まっているのが、紙パックが不要で吸引力も高いサイクロン方式。しかし、一部の微細、軽量なゴミは空気と一緒にファンの方に流れ込んでしまう。このため、従来型はフィルターの掃除がそれなりに必要だった。
東芝コンシューママーケティングが昨年11月に発売した「タイフーンロボ」は、「フィルターを7年半、手入れしなくても高い吸引力を持続できる」と画期的。今年9月には機能を向上させ、フィルターの手入れが約10年間不要という商品を売り出した。
ヨドバシカメラ新宿西口本店では「2週間で70台が売れる人気商品」という。掃除機を選びに来店した30代後半の女性は、「子供のアレルギーが気になり、排気がきれいなサイクロン方式に買い替えたいが、フィルターの掃除が面倒。なるべく手入れが簡単な商品が欲しい」と熱心に試していた。
エアコン以外でも
「フィルター掃除不要」の代表格はエアコン。商品の多くは「10年間、手入れがいらない」。同店によると、「エアコンを選びに来る人の7割以上が機能を知っており、高額商品の中では成約率が高い」という。
エアコン以外も、空気清浄機で「8年間交換不要」(三菱電機)、脱臭機で「交換不要」(富士通ゼネラル)などフィルター掃除を楽にした機器は増えている。
三菱電機ホーム機器が、首都圏を対象に行っている生活態度調査によると、掃除回数が毎日1回以上の主婦が平成12年は7割近くいたが、今年は約半数が2日に1回以下で、「掃除は毎日」は、もはや一般的な主婦像ではなくなっている。
調査を担当した商品企画課の宮崎睦子さんは「主婦という概念がなくなりつつある。共働きの影響ばかりではなく、清潔感へのこだわりが進む一方、家の外で自己実現の時間をつくりたい主婦も増え、家事にかける時間を最小限に抑えたいという傾向が強まっている」と分析している。
“楽チン”逆手 ライバルも歓迎
家庭に広まる「手入れ不要」の生活機器。「お掃除のプロ」と呼ばれるハウスクリーニング・家事代行業者は、どう見ているのだろうか。
全国で約1500店を展開しているダスキンのケアサービス事業本部企画部、田中利正さんは「『手入れ不要』は一部の高価格帯商品。家電メーカーなどが『手入れ不要』と宣伝することで、逆に『一般の商品は手入れが必要』と利用者に認識してもらえる。そこにビジネスチャンスがある」と話す。ライバル商品の拡大は、むしろ歓迎すべきことのようだ。