成長著しいネット広告の新たな媒体として、携帯電話の存在感が高まってきた。広告主が狙う層に的確に広告を打てることが売りの一つで、通信速度の向上や画面サイズの拡大が進んだことで、利用価値も上がっている。携帯電話向けのモバイル広告市場は、パソコン向けの約10分の1だが、携帯電話の加入者数は1億人に迫る勢いで、さらにその存在感が増すことは必至だ。
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NTTドコモの広告配信サービス「メッセージフリー」の携帯画面。登録者の属性に応じた広告展開ができる |
1000万人
NTTドコモが加入者向けに広告を配信する「メッセージフリー」の登録者数が10月8日に1000万人の大台を突破した。
このサービスは、昼食を買いにコンビニに買い物に行こうとすると、「30万人に飲料無料プレゼント」などの広告が電子メールで配信されるというものだ。
広告主の注目度が高いのは、加入時の登録情報を使ったターゲティング広告が打てるためで、地域や年齢、性別のほか、時間指定(11時台、16時台、17時台)などで絞り込んだ消費者に的確に広告を配信することができる。午前11時台の昼食時間前では、飲料や弁当などの情報を流し、金曜日には週末向けに映画情報を流せば効果的だ。
配信を拒否することもできるが、「お得な情報が取得できるために利用者が増えている」(前田義晃コンシューマサービス企画担当部長)という。
これまでの広告主は、ゲームや音楽などの携帯向けコンテンツ業者が多かったが、携帯電話の高機能化で文字情報だけでなく、高精細な商品画像も配信できるようになったことで、利用価値が向上。大手一般企業からの広告配信も増え、現在の広告提供企業数は160社を超えた。
企業ニーズ
KDDI(au)もドコモと類似した広告配信事業を展開しているが、すでに登録者数は600万人を超える有力な広告媒体に育ちつつあり、同社の塚田俊文ポータルビジネス部長は「20〜30歳代の女性を広告ターゲットにしたい企業ニーズが最も多い」と話す。
携帯電話は、ターゲティング広告の媒体として有力だが、携帯経由のネット利用が急増しているために、 画面に広告を張り付ける「バナー広告」の媒体としても存在感を増している。
ドコモのトップページは「1日に約1100万ページビューもある」といわれ、閲覧回数の多さから広告単価も高く、「料金は一定期間の掲載で一般全国紙の全面カラー広告並み」(関係者)といわれる。
auも検索最大手の米グーグルとも提携したことで検索利用件数が増加。KDDIの小野寺正社長は「広告収入が約3割も増えた」と手放しで喜ぶ。
携帯各社の広告収益はまだ数十億円規模で業績への貢献度は小さいが、広告媒体としての潜在能力は高い。