外食産業に押されて存在感が薄れていた百貨店のレストラン街が、復活の兆しをみせている。食の集客効果に着目した大手百貨店がてこ入れに注力し始めたためで、レストラン街の大規模改装が相次ぎ、高級ホテルのような設備とサービスを整えるところも出てきた。狙いは「食から売り場への誘導」。業界では「デパ地下」に続く「デパレス」に期待する声も出ている。
|
ホテル調に改装された百貨店のレストラン街入り口。係員による案内サービスが売りだ=高島屋京都店(撮影・森田晶宏) |
高島屋京都店は9月、25年ぶりに全面改装したレストラン街をオープンした。約20億円を投入し、空間全体を庭園に見立てたホテルのロビーのようなスペースを作った。各所に樹木やベンチを配置し、来店者はゆったりとした雰囲気でメニュー選びを楽しめる。
レストラン街の改装は業界トレンドともいえる状況だ。そごうが昨年6月に横浜店、今年5月に千葉店を立て続けに改装。10月下旬には、松坂屋の名古屋本店のレストラン街がリニューアルオープンする。
各店に共通するのは、居住性の重視だ。
そごう千葉店は複数階をまたぐ吹き抜けを作り、レストランのフロアから空が眺望できるようにした。店選びの相談や帰りのタクシーを手配するコンシェルジュを常駐させ、高級ホテルのようなサービスを狙う。
居心地のよさを前面に出したのは、食事で顧客を集め、買い物に誘導するというこれまでとは逆の流れを狙うためだ。
「食事目的で来店していただき、服飾フロアなどへの売り上げにも波及させたい」(高島屋)というもくろみは当たり、先行したそごう横浜店では、改装後の来店者数が2・5倍に伸び、売り上げも3倍に急増した。
改装を実施した百貨店には、これまで未出店だった有名店を誘致して、レストラン街の「味」で集客力アップを図ろうとするところもある。
かつて、百貨店のレストランといえば「お子さまランチ」や「カレーライス」を庶民に紹介する食文化の発信地でもあったが、そんなノスタルジックな戦略ではもはや通用しない。ホテルや隠れ家レストランなどから客を奪える味が必要だ。
そごう親会社のミレニアムリテイリングは、「百貨店のレストランは、買い物ついでに寄るという位置づけだったが、それを逆転させる」と力を入れる。
食事の後に買い物ができるように、営業時間を延長するケースも出るなど、“デパレス”の集客力に大きな期待が寄せられ始めている。