恋愛小説が似合う紳士
「児玉清」現象をさぐる ハンサム&インテリ
東京朝刊 by 桑原聡
作家、蓮見圭一さんのデビュー作『水曜の朝、午前三時』(新潮文庫)が、俳優の児玉清さんを起用した帯と地下鉄の中吊り広告をきっかけに火がついたように売れ始め、10月上旬で21万部に達した。
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俳優、書評家・児玉清さん(撮影・桑原聡) |
最初は帯だった。書店で目立った動きのなかった同書の帯を5月下旬、重版を機に児玉さんの言葉「こんな恋愛小説を待ち焦がれていた。私は飛行機のなかで、涙がとまらなくなった…」を使ったものに代えたところ、突然、販売部数が右肩上がりとなった。
そこで9月上旬の3日間、東京メトロに児玉さんの顔写真を大きく使った中吊り広告を出すと、売れ行きがぐんと加速。さらに同月下旬の3日間、大阪の地下鉄に同じ中吊り広告を出したところ、大阪市内主要50店の販売部数は、広告出稿前後の3日間の比較で約3倍に跳ね上がった。
児玉さんは「この本は純で透明感のあるつつましやかな恋愛小説。その魅力に気づいた全国の書店員さんたちが店内ポップなどで推薦してきた経緯があり、私はそれを少し後押ししたにすぎません」といたって謙虚だ。
学習院大学でドイツ文学を専攻し、無類の読書家として知られる児玉さん。特に海外のエンターテインメント系小説に詳しく、翻訳を待ちきれず原書で読むことが多い。大ブームとなった『ダ・ヴィンチ・コード』も日本でいち早く推薦した。NHK衛星第2の「週刊ブックレビュー」の司会も14年間にわたり務めている。
ある広告代理店の制作者は「アクの強いタレントがもてはやされる中で、児玉さんはハンサムで誠実さとインテリジェンスを備えた貴重な存在。特に女性に《児玉さんの言うことなら信じられる》と感じさせるところがある。恋愛小説の広告と児玉さんはベストマッチだと思う」と話す。
新潮社によれば、購読者の4分の3が20代から50代の女性という。
「自分が面白いと感じた小説を素直に紹介してきましたが、こうなると、書評も、より心して書かないといけませんね…」。児玉さんはそうつぶやいた。
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