行楽の秋、食欲の秋…とくれば、恋しくなるのが旅情を誘う駅弁。“達人”が教えるその魅力や楽しむコツとは−。
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映像もセットになった『日本駅弁図鑑100』(撮影・榊聡美) |
出合い求めて
現在、全国で2000種以上が販売されている駅弁。「何より多様性がすごい。コンビニの弁当や“ほか弁”、デパ地下のお弁当は全国共通だけど、駅弁にはさまざまな“個性”が入っている」
こう話すのは、2000種を超える駅弁を紹介する人気サイト「駅弁資料館」(http://eki-ben.web.infoseek.co.jp/)館長の福岡健一さん。
鈍行電車から新幹線へ、さらには鉄道から飛行機へ…。旅の移動時間が短縮されていく代わりに、移りゆく車窓の景色を眺めながら駅弁を味わう、という楽しみはめっきり減ってしまった。
近ごろでは、全国の有名駅弁を集めたデパートの催事が大人気で、通信販売もされるようになり、メーカーは新たな活路を見いだしている。
しかし、達人いわく、駅弁の楽しみは「偶然の出合い」。たまたま訪れた駅で売られている駅弁を味わってみるのがやはり一番だという。
また、掛け紙をはずし、ふたを開けるまで中身がわからないところにも「出合い」が−。そんな偶然の出合いを重ねることが楽しみ方のコツだという。
目でも味わう
「個性に気を配って、地域の特産を使って工夫を凝らして作っているのが駅弁の特徴」と福岡さん。その背景を知ることも楽しみ方のひとつだ。
このほど、その手引きとなる『日本駅弁図鑑100』(ジェネオン エンタテインメント)が発売された。北海道から九州まで、各地の有名駅弁100種が10巻に分けて収録されており、先月に1〜5巻が、残りは来年春に発売予定だ。
本とDVDがセットになっており、駅弁作りに対する熱い思いや誕生秘話が、作り手の口から土地の言葉で語られているのが興味深い。
火を入れては寝かせる、という作業を繰り返して約1週間かけて仕上げる折尾駅(福岡県北九州市)の「かしわめし」、食糧難だった戦時中、少ない米で作れる駅弁を、と知恵を絞って誕生した北海道・函館本線森駅の「いかめし」…。
「たった2本しか入っていないきゃらぶきでも70過ぎのおばあちゃんが1年がかりで作っていたりする。私自身、この仕事に携わるようになって、駅弁の中身をじっと見るようになりました」。同社制作本部プロデューサーの原沢修一さんはそう明かす。
駅弁人気を支えているのは、地元の文化を弁当の中に詰めている、という作り手の自負にほかならないようだ。
達人のお気に入り
“駅弁の達人”福岡さんに「一番お気に入りの駅弁は?」と尋ねたところ、選んだのは横浜・崎陽軒の「シウマイ弁当」(710円)。
横浜名物「シウマイ」をメーンにした幕の内弁当は全国的にも有名で、駅やデパ地下などで合わせて1日1万5000〜2万食が売れている。
福岡さんが絶賛するのは昔ながらの経木を使った容器。「全国でもほとんど見当たらなくなりましたが、木の容器は調湿機能に優れているので冷めてもおいしいんです」
同社マーケティング部によると、タケノコの煮付けもファンが多く、商品化を望む声もあるほどだとか。