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パムク氏にノーベル文学賞
イスラム批判「トルコのカフカ」  
  東京朝刊
【ロンドン=蔭山実】スウェーデン・アカデミーは12日、2006年のノーベル文学賞を、「トルコのカフカ」とも呼ばれる現代トルコの代表作家、オルハン・パムク氏(54)に授与すると発表した。同アカデミーは授賞理由について「祖国の街に漂う鬱屈(うっくつ)した魂を探し求め、文化の衝突と融合で新たな境地を切り開いた」としている。トルコからの同賞受賞者は初めて。

トルコ人作家、オルハン・パムク氏

パムク氏はトルコのイスタンブールで中産階級の家庭に生まれ、建築やジャーナリズムを学んだ後、米コロンビア大学に留学。82年にデビュー作「ジェヴデット氏と息子たち」でトルコの権威ある文学賞を受賞した。

世界的に知られたのは3作目の「白い城」(85年)。17世紀のイスタンブールを舞台に、捕虜のイタリア人青年と、彼を買い受けたトルコ人研究者の関係を追い、異なる文化間での人間のエゴや個性の変遷を描いた。

トルコでは政治や社会問題をめぐる論客としても知られ、イスラム社会のタブーに挑戦。作家のサルマン・ラシュディー氏が作品への非難から殺害の脅威を受けた際は、いち早くイスラム批判を公言した。海外でも多くの文学賞を受賞し、日本では「私の名は紅(あか)」(98年)と「雪」(2002年)が翻訳出版されている。

賞金は1000万クローナ(約1億6000万円)。表彰式は12月10日にストックホルムで行われる。

トルコ研究者、野中恵子さんの話「パムク氏は固有の文化や伝統を守るべきだというスタンスをとりながら、トルコの保守的なイメージを覆すような現代的タッチの物語を展開し、世界中に共感を呼んでいた。トルコは西洋社会と政治的にも歴史的にも敵対関係にありながら、常にヨーロッパを模範としてきた。彼は、そのことによってトルコ人に生まれる葛藤(かっとう)や、アイデンティティーの再考を迫られるような人間の内面世界を描いてきた。今回の受賞で、現代トルコに新しいページが開かれたと思う」



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