健康食品の効能をうたう情報は数知れない。しかし、その多くは有名人の体験談やイメージをよりどころにしただけで、科学的根拠に乏しいのが実情だという。最新の研究成果を閲覧できる、独立行政法人国立健康・栄養研究所のサイト「『健康食品』の安全性・有効性情報」を参考に、健康食品情報を見分けるポイントを探った。
冷静な評価
「『健康食品』の安全性・有効性情報」のトップページには、特定保健用食品(トクホ)制度の解説といった基礎知識や、被害を及ぼすおそれがある「健康食品」情報などの目次が並ぶ。
その中から「素材情報データベース」をクリックしてみた。健康食品に含まれている約320種類の素材や成分について、その有効性や安全性を評価している。
「アレルギーを誘発する可能性が示唆され、妊娠中、授乳中の安全性については十分なデータがないことから使用を避けるべきだとされる」
「『抗ガン効果がある』『免疫力を高める』などといわれるが、ヒトでの有効性については信頼できるデータが見当たらない」…。
コエンザイムQ10、クロレラ、アガリクスなど、テレビや健康雑誌などで効能が盛んに叫ばれている成分についても、評価はいたって冷静だ。サイトでは、こうした素材・成分の有効性については、大半が研究段階に過ぎないことが分かる。
人のデータ重視
評価の科学的根拠は、国内外で発表された学術論文だ。権威にばらつきがある学会発表と違って、専門誌に掲載された学術論文は、複数の専門家が内容を審査してから掲載を決めるため、「ある程度客観的な評価が下されたものと判断できる」(国立健康・栄養研究所)という。学説が覆されることもよくあるため、定期的にチェックし、最新の情報を入手することが必要だ。
人での試験データを重視していることも大きな特徴だ。食品の安全性を評価する際は、試験管内での実験に始まり、動物実験、人での試験という段階を踏んでいくのが通例だが、「動物実験では『人が食べて効果がある量』を割り出すことが困難。いくら動物実験で効果があるとされても、その結果をそのまま人間に当てはめられるとはかぎらない」と、同研究所の梅垣敬三・健康食品情報プロジェクトリーダーは理由を説明する。
実際には、試験管や動物実験といった基礎研究の段階で、あたかも人間に効果があるようにうたわれている情報も少なくないという。
バランス大切
健康食品分野における行政の対応は、被害や問題があった業者を摘発し、公表するという事後チェックが中心だった。事前に消費者に注意を呼びかけるサイトを開設したのは、「科学的根拠が乏しいのに『体に良い』とうたう情報が多い。ネット上に間違った情報が氾濫(はんらん)している現状では、公的な機関が信頼性のある情報を出す必要性があると考えた」(梅垣プロジェクトリーダー)からだ。
海外から輸入された「健康食品」による健康被害がいくつか報告されたこともあり、2年前は1日数百件程度だったサイトの平均アクセス数は、6000件にまで伸びたという。
ただ、サイトで有効性や安全性が高いと判断されていても、利用方法や利用する人によって効果は異なる。国の審査を経ている特定保健用食品であっても、表示をよく見て摂取量の目安を守ることが大前提だ。
食品科学広報センターの金子友紀さんは「基本はあくまでバランスの取れた食生活。たとえ健康に有効な成分が入っているといっても、やたらとたくさん取ることをすすめるような情報には注意する必要がある」と指摘している。
健康食品を利用する際のポイント
▽安易に利用しない
(可能な限り薬剤師や栄養士など専門家にアドバイスを求める)
▽表示をよく見て成分をチェックする
(効能をうたっている成分が入っていない製品もある)
▽病気の治療目的で使わない
(それほど効くのなら体になんらかの悪影響を及ぼす可能性もある。治療は医療機関で受けるべきだ)
▽人の体験談を当てにしない
(効き目には個人差があり、摂取量によっても効果は変わる)