日本航空は21日、来春から順次、国内線、国際線に投入される小型の主力となるボーイング社製の新型機「B737−800」を公開した。日航にとっては、経営再建のカギとなる採算性向上の“切り札”ともいうべき新型機だけに、同社がよせる期待も大きい。一方で先行する全日本空輸は、2月から国際線の一部をさらに小型化するなど一層の効率化に着手。航空業界の競争は、新型機材の投入で新たなステップを迎えそうだ。
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日本航空が来年から導入する小型の新型航空機B737−800の外観。特徴的な翼の形状で騒音の低減などを図った |
寄せる期待
「小型機をこの機種に統一し、利便性向上と効率的な運用を図ります」−。同日、羽田空港で行われた新型機の披露会見で日本航空の西松遙社長は、こう強調した。
日航が導入するB737−800は、約165席の小型機。従来のB737−400や、エアバス社のMD81、MD90などの後継機にあたる。来年3月から羽田〜山口宇部、羽田〜宮崎間の路線に導入され、来年6月までには国際線にも就航する主力機だ。
客席規模で同水準の従来機に比べ、航続距離が約1・3〜2倍に伸びるほか乗客1人あたりの燃費も15%程度向上する。
搭乗率低迷
日航の航空事業が低迷している要因のひとつが、航空機の更新遅れによる機材の老朽化と、大型機の運行による運行効率の悪化だ。
現在、中国やアジア路線には250人乗りのB767や290人乗りのA300などが就航しているが、こうした中型機は繁忙期を除くと搭乗率が低迷。空席を団体旅行などに格安料金で提供せざるを得なくなり、採算性を悪化させていた。
このため現在の中期経営計画でも、老朽化が進むB767やB747の退役を進めると同時に、機材のダウンサイジングを経営改善の要に据えている。今年度42%の中小型機の比率を平成20年度には55%、22年度には62%に引き上げる方針だ。
最適配置
ただ、同様の施策で先行する全日空は、効率化に一層の拍車をかけている。全日空では、日航の新型機の“兄弟機”にあたるB737−700を今春から国内線に投入。今後、全日空では21年度までに国内線・国際線に同型機を30機導入し、機種更新によるコスト削減効果を約60億円と見込んでいる。
さらに、来年2月には現在160人乗りのB737−300で就航している成田〜青島(中国)間を、110人乗りのエアバス機、A320に切り替える。座席数を減らす代わりに、ビジネスクラスの席を20席設けて、客単価の向上と空席率の削減を図る考えだ。
導入時期の違いから、日航のB737−800が30機体制となるのが平成22年度と全日空に比べて1年近いタイムラグが残る。経営難が指摘される日航では、機材体制が整うまでに一層の経営面でのコスト削減も求められそうだ。