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就寝時間、午後9時までに
子供の生活改善、親しだい
  東京朝刊 by 津川綾子
子供の生活リズムの乱れが問題となるなか、「保護者の意識を変えていこう」という活動が広がっている。生活習慣の確立はこれまで主に家庭が担ってきたはずだが、そのしつけをする側が夜遅くまで子供と過ごす機会が増えている現状に懸念を示す声が大きくなっている。子供の生活リズムを整えるにはまず親の意識から…と改革に乗り出した形だ。

大人の時間
「大人の時間に、子どもをつきあわせていませんか?」−。今月、東京都が始めた「子どもの生活習慣確立プロジェクト」の広報ポスターにこんな文言が踊った。

このプロジェクトは「子どもの生活習慣を整えるのは本来は家庭(保護者)の役割だが、家庭の教育力が低下しているといわれ、それならば、学校や地域社会が協力して進めよう」(都社会教育課)と始まった。

ホームページには「親子の生活習慣チェック」とうたったチェックリストを設け、「夜遅くにコンビニや外食など子供を連れて外出することがあるか」「子どもの就寝時間が遅いときは朝は無理矢理起こさないようにしているか」など、親に子育て態度を振り返るよう促している。

子供の生活リズムを決めるのは、当然ながら、親の影響が大きい。「子どもの早起きをすすめる会」の会員で小児科医の文教大学教育学部助教授、成田奈緒子さん(43)は、こんな事例を挙げ、親の考え方に懸念をにじませた。

「(幼児や児童の保護者対象の)講演などで、『午後8時にはテレビを消して(子供と一緒に)寝てください』とお母さん方に話すと、『10時からのドラマをみないと、翌日話の輪に入れないんです』という反応が返ってきます。これでは子供も遅くまで起き、ドラマをみてしまうようになります」

成田さん宅では、自身は午前4時に起床し、小学2年の長女も午前5時に起きる。「私のまねをして起きたくなったようです」とほほえむが、医学的な早寝・早起きの効果を知ったうえで、生活習慣確立における親の影響力の大きさを身をもって示している。

チェックシートで改善
子供に生活習慣の改善を促していくことが、保護者の意識改革につながっていくケースもある。

東京都葛飾区立上平井小学校は平成15年度から学期に1度、1週間にわたって「朝食は食べたか」「早寝(1、2年は午後9時まで、5、6年は同10時まで)はしたか」などをチェックする「生活点検」を実施している。さらに今年5月以降は週に1回、授業開始前の午前8時20分から「朝の3分間体操」を実施し、9月からは月に一度、「ノーテレビノーゲームデー」を設け、生活改善を促している。

同小に5年の長男と2年の二女が通う母親の一倉恵利子さん(40)は、「子供は負けず嫌い。生活点検で『テレビは2時間以内』などの目標が達成できずに『×』がつくのはいやだから頑張ります。最初は何で学校に生活のことまで知らせないといけないのかと驚きましたが、生活習慣を意識するいいきっかけだと思えるようになりました」と評価する。

渋谷英一校長は言う。

「本来、しつけは家庭で取り組むべきもので、学校でできることは限られている。しかし、午後9時以降は大人の時間といわれた昔と違い、今は親子が9時以降に一緒にドラマを見たり、子供を連れて居酒屋やカラオケに行くような時代。学校が(主体的に)できる取り組みに協力をあおぐ形で、家庭における生活習慣が確立するよう息長く呼びかけていきたい」
“午後9時”就寝大切
小児科医の成田さんは早寝・早起きの効果をこう語る。

「気分を穏やかに保つ脳内ホルモンの『セロトニン』は午前5時から7時の間に起きて、朝日を目の中に入れると十分に分泌されることがわかっています。また、成長ホルモンが分泌される午後10時から午前2時に熟睡しないと、成長ホルモンが十分に分泌されないことにもなります。そのためには午後9時までに寝ることが必要です」



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