駅やコンビニエンスストア、デパート地下の総菜売り場などで最近、カラフルなこまのイラストを目にする機会が増えた。1日に何をどれだけ食べればいいかを示した、その名も「食事バランスガイド」。個食傾向が進むなか、食のバランスを自己管理するための参考にしたい。
目をひく色彩
成人向け(想定エネルギー量2200キロカロリー前後)の「食事バランスガイド」は上から、多く必要な順に主食、副菜、主菜…と、5つに区分し、必要な摂取量とメニューの事例をイラストで表現している。軸は必要な水分、こまを回転させるのは適度な運動。こまのバランスを保つことが、すなわち健康を保つことにつながる、というわけだ。
ガイドは、「つ=SV(サービング)」という単位で示しているのが特徴。主食はご飯を軽く1膳(ぜん)、食パン1枚が「1つ」で1日の適量は5〜7つ。野菜・海藻類を使った副菜はサラダ1皿、おひたしなどの小鉢1個を「1つ」、野菜の煮物やいためもの1皿を「2つ」として1日に5〜6つ…。
カウント方法は慣れるまでに時間がいりそうだが、こまの形がイメージできれば、朝はパンをかじっただけだったから、昼と夜の食事は副菜を意識的にとろう、という考えがわき、偏りがちな食生活の改善に役立つ。
世界初の試み
家庭科で「緑黄色野菜は1日120グラム、淡色は230グラム」と教わった。だが、ガイドでは「副菜は5〜6つ」と大きく趣が異なる。ガイド作成に携わった、女子栄養大学の武見ゆかり教授(食生態学)はこう説明する。
「食に関心の薄い人たちを含め、誰もが共通にわかりやすいのは、やはり食べるときの料理の状態。米国をはじめ、海外にもフードガイドはありますが、基本は食材料で示されていて、おそらくバランスガイドのようなケースは世界初だと思います」
また、この方法は食生活指針だけでなく、例えば、愛知版には「きしめん1杯=2つ」というように、郷土食などの文化性も反映させることができるのが利点だ。
朝寝坊して朝食を抜いたり、付き合いの飲み会があったり…。実際には、毎日こまの形をバランスよく保つのは難しい。ガイドの普及をすすめる農林水産省ですら、今年6月に1週間の食事調査を行ったところ、約4400人の職員のうち、7日間すべてガイドに沿った食事ができていたのは「わずか4人」(同省消費・安全局)。
「自分でチェックしてみて足りなかったり、とり過ぎてしまった場合は翌日気をつけようと、自分で食べ方を調整するものさしとして定着すれば」と武見教授は話す。
市販の弁当などの中食でも、商品開発にガイドを活用する動きも出始めている。個食や食の外部化が進み、「自分の食事バランスは自分で管理する」時代がきたようだ。