電気通信事業者協会が8日発表した10月の携帯電話・PHS契約数まとめによると、新規契約から解約を差し引いた純増数は、KDDI(au、ツーカーの合計)が20万600件で競合他社を圧倒した。10月24日に始まった「番号ポータビリティー」(番号継続制度)による増減も、KDDIは10万件弱の純増で“1人勝ち”状態。端末投入で出遅れたNTTドコモ、システム障害などを起こしたソフトバンクモバイルは、KDDIに顧客を奪われて苦しい展開となっている。
ドコモとKDDIはこれまで毎月の純増数で拮抗(きっこう)してきたが、10月は大きく差が開いた。ドコモの純増数は4万800件とKDDIの約5分の1にすぎず、平成6年3月以来の低い水準となった。
純増数が大きく変動したのは、番号ポータビリティーによる携帯会社間の転入・転出分(10月24〜31日)が反映されたからだ。
同制度の全利用者は約20万人と静かなスタートだったが、KDDIが10万件弱増やした半面、ドコモは約7万件強、ソフトバンクモバイルも約2万件強減らし、顧客の多くがauに転入した格好となった。auは秋冬商戦モデル投入を例年より2カ月以上前倒ししたことも奏功し、若年層を中心に多数の転入を獲得できたようだ。
ただ、ドコモは主力端末の投入を今月以降に控えており、今回の結果については「全く悲観していない。年末商戦の12月の契約者数が勝負の分かれ目だ」(幹部)と強気の姿勢を崩していない。
一方、今年4月にボーダフォンを買収して参入したソフトバンクモバイルは、10月の純増数が2万3800件と低迷を続けているが、この数字以上に厳しい現状も見え隠れする。
具体的には、ネット接続サービスの加入者が1万8000件の純減となった点だ。これはメールやネットを利用するうえでの基本サービスで、携帯加入と同時加入するのが一般的。「この数字が実態を表している」(業界関係者)という見方ができる。
それでも純増が続くのは、「音声通話専用のプリペイド携帯の寄与が大きい」(同)とされる。9月にプリペイドの解約期限を大幅延長したことから、利用がなくても加入継続となり、解約率が低下する仕組みだ。
システム障害に伴う受け付け業務停止や「0円」広告問題の影響が懸念されるソフトバンクモバイルだが、端末の種類がボーダフォン時代よりも改善した点では支持者も多く、孫正義社長が「草刈り場とみられたが、なかなか健闘している」と指摘したほどだ。
番号ポータビリティーは一過性のものではない。消費者側に立ったサービスを提供することで、各社のシェアは大きく変動する可能性がある。