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使い勝手で存在感“増量”
小さいワイン、デミボトルが人気 
  東京朝刊 by 頼永博朗
「ワインは飲みたいけれど、レギュラーボトル(750ミリリットル入り)では量が多い」。そんなときにぴったりなのが、ハーフや4分の1サイズのボトルだ。「飲みきりサイズ」として、一人暮らしの女性やお酒に弱い人に支持されているほか、一度に何種類も楽しみたいときや旅行にも重宝する。最近は品ぞろえを充実させる百貨店もあり、売り場の隅で“日陰の身”だった小容量のワインが、使い勝手の豊富さで存在感を増している。

世界各国のワインが小容量のボトルで選べる売り場。レギュラーボトル(左)に比べ、使い勝手の良さで人気がある=東京都渋谷区の東急百貨店東横店(撮影・頼永博朗)

ずらり140種類
東急百貨店東横店(東京都渋谷区)の和洋酒売り場は、圧巻。一角に設けられた棚には、ハーフや4分の1サイズのボトルばかり約140種類のワインが並ぶ。輸入品を中心に、1000円以下の日常用から2万5000円以上の高級品まで、好みの味や予算に応じて選べる。

同店は9月に売り場を改装。これに合わせ、小容量の専用棚を新設し、品数も従来の3倍に増やした。また、4分の1サイズを「テイスティングサイズ」と名付け、手軽さを売りにしている。

取り扱いワイン全体の1割にも満たないものの、売り上げは改装後3週間で前年比70%増。バイヤーでシニアワインアドバイザーの駒場啓さんは、「顧客の中心は30代前後の独身女性。価格はレギュラーボトルの半額、4分の1とはいかず割高ですが、新しいものを次々に試したいという需要が多い」と話す。

専門誌も特集
購読層にワイン入門者も多い専門誌『ワイン王国』(隔月刊)は、9月号で「ピッコロ」と名付けた4分の1サイズのワイン計80本をソムリエらが一挙に試飲する特集を組んだ。ワインメーカーの担当者は「『しぶいち』(4分の1サイズの業界用語)をこれほど多く一度に紹介した例は珍しい」と言う。同誌は2年前にも、輸入、国産のハーフボトル延べ836本を2回にわたり、とじ込み付録で特集。読者から大きな反響を得たという。今、なぜ小容量に注目するのか。

編集長の村田恵子さんは「ワインが国内に浸透してきたものの、『レギュラーボトルでは飲みきれない』という人は少なくない。中には『ハーフでも多い』という人もいます。そこで、国内で買える容量の少ないワインは何種類あるのか調べてみよう、という発想から企画しました」と話す。

9月号では「ピッコロ」の活用法として、ランチタイムや就寝前、ピクニック、鉄道旅行、気軽な贈り物などを提案。また、食事の流れに合わせて種類を変える楽しみ方も勧めている。

村田さんは「容量が少ないと軽食にも合わせやすいので、総菜や弁当売り場に置いてあってもいい。年配の方や初心者にも飲みやすい大きさで、幅広い可能性を秘めています」と魅力を語る。

ブーム再来?
小容量のワインはもともと、「『ベビー(4分の1サイズ)シャンパン』をストローで飲む」というスタイルが約7年前にメーカーやファッション誌によって提案され若い女性に広まったことがある。

だが、ワインにストローは似合わない。そのうえ、小容量だと単価が安く利幅が小さいことや、フルボトル並みの良好な管理がなされていないケースが多かったり、長期熟成に向かないといわれたりするなど負の印象が強く、業者は扱いたがらないのが本音だ。

しかし、ワインの流通に詳しい専門誌『WANDS(ウォンズ)』主宰の芳野真光さんは「酒販免許の自由化で、酒を扱っていなかったコンビニエンスストアやスーパーマーケットが一定の棚を酒に割くようになった。限られたスペースに単価の安い品ぞろえが求められ、扱う店舗は徐々に増えるのでは」とみる。

輸入販売会社のファインズでは「昨年ごろから、小売店やレストランの需要が高まっており、売り上げ、輸入量ともに増えている」。同エノテカのワイン事業部長、阿部健太郎さんも「取り扱い量はまだわずかだが、高齢化が進むなか、『いいワインを少しだけ飲みたい』という需要は高まるとみられ、関心を持っている」と話す。

アルコール消費量全体の減少で、ビール、焼酎は小容量の商品が定着。日本酒も「カップ酒」の人気が高まっている。ワインにも同様の事情があり、飲み方の提案しだいではワインブーム再来の鍵を、小さなボトルが握るかもしれない。



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