セブン−イレブンが、ついに業界では破格の低価格ペット飲料の販売に踏み切った。100円ショップや24時間スーパーの拡大など、コンビニ以外の業態との競争が激しくなり、コンビニ各社の既存店売り上げはマイナスが続く。セブンは価格面の攻勢に出ることで、「便利だけれど、高い」イメージのコンビニ像を自ら壊し、顧客に存在意義をアピールする作戦だ。
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店頭に並ぶ500ミリリットル入り飲料。セブン−イレブンは98円の低価格商品を発売する=東京都千代田区のセブン−イレブン内神田2丁目店(撮影・高橋寛次) |
「セブンにも安いものがあると顧客に知ってもらうための商品。定価販売に何らかの対応が必要だったのは、確かだ」
セブンの幹部は、98円のペット飲料を自社開発した理由をこう説明した。「大手メーカーと同じ水準の原料、工程で製造している」と語り、ただ安いだけでなく、品質の高さも強調した。
清涼飲料は店舗売り上げ全体の約10%を占める戦略商品。「粗利益率は平均4割近い」(コンビニ大手)など大きな収益源になっている。
値下げに対するオーナーやメーカー側の抵抗も根強いが、セブンはあえて昨年9月「コカ・コーラ」などの大手メーカーの飲料7品目の値下げを実施。値下げ当初は売り上げを1・5倍に伸ばした。さらに調味料、低価格のプライベートブランド(PB、自主開発商品)の投入と値下げ戦略に突き進んでいる。
他業態の脅威
これまでセブンが実施した値下げではライバル各社に追随する動きが広がった。しかし、今回の98円飲料の投入には「対抗策はとらない方針」(ローソン)など比較的冷静な反応が出る。
ローソンやエーエム・ピーエム・ジャパンなどは新業態店として「100円ショップ」を展開。そこで販売している低価格商品での対応が可能とみているためだ。
コンビニの競争相手をみると、「ショップ99」を展開する九九プラスは、PBのペット飲料を79円で販売。「今後は総菜などの加工品でもPB商品を拡充する」としている。
大手飲料メーカーのペット飲料を100円前後で販売するマツモトキヨシは、価格に敏感な主婦らの支持を集めている。24時間営業の店を積極展開する方針でコンビニの足場を崩す構えだ。
浮上のかぎは
コンビニ業界は頭打ちとされ、「革新的な店が必要」(ローソンの新浪剛史社長)と女性向けや高齢者向けコンビニなどを模索している。
一方、セブンはこうした動きと一線を画し、地域ニーズに応じ、商品の宅配などのサービスや独自商品の充実化といった戦略を重視する。「低価格飲料も品ぞろえ充実策の一環」(幹部)と位置づける。「98円飲料」が新たな顧客の開拓につながるか、売れ行きが注目される。
セブン、98円の500ミリ飲料発売
セブン−イレブン・ジャパンは2日、500ミリリットル入りペットボトルのオリジナル飲料を、98円で発売すると発表した。21日から北海道を除く一部店舗で販売する。
緑茶、ウーロン茶、麦茶の3種類で、通常147円で販売されている飲料と同程度の品質があるとしている。低価格商品の需要が強い学生街の店舗などでの目玉商品と位置付ける。
セブンは昨年9月には大手飲料メーカーに納入価格の引き下げを求め、売れ筋商品を中心に15%の値下げを実施。全国ブランドの商品を中心に割高感の解消に取り組み、今年10月には調味料も平均15%の値下げに踏み切るなど、低価格路線を強化している。