冷蔵で流通するチルドカップコーヒーの市場が成長している。専門店で飲むコーヒーに近い本格的な味わいが、缶コーヒーを敬遠しがちな女性消費者まで取り込んでいるようだ。有名コーヒーチェーンブランドを冠したり、高級タイプの新商品の発売も相次ぐ。4年連続2ケタ成長という推計もあり、市場拡大ピッチはまだ続きそうだ。()
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缶コーヒーとは“ひと味”違うチルドカップコーヒー。購入者は若い世代が多く、販売されるのは主にコンビニだ=東京都豊島区のファミリーマートサンシャイン南店 |
本格的コーヒーのイメージを打ち出すのは「ドトール」「スターバックス」「タリーズ」などの有名ブランドの商品だ。
ドトールコーヒーは従来、200ミリリットル容量で販売してきたが、6月に270ミリの「アイス・カフェ・オレ」を投入。鳥羽豊社長は「缶コーヒーは熱処理でコーヒーの風味がダメージを受けてしまうが、チルドはより自然なコーヒーに近い」と人気の要因を分析する。
スターバックスと提携しているのはサントリー。スタバ店舗で取り扱うコーヒー豆を使用して、「スタバ」ブランドのコーヒーを気軽に購入できる点が受けた。平成17年9月の発売当初は首都圏のコンビニだけで販売していたが、生産委託先の工場が増産態勢を整え、現在は北関東3県にも販路を拡大。今月21日には甲信越などでも発売する。
先月、伊藤園がタリーズ運営会社の子会社化を決めたのも、成長するチルドコーヒー市場の魅力が理由の1つとみられる。タリーズブランドの商品はすでに販売されているが、コンビニなど流通各社に太いパイプを持つ伊藤園が経営を主導することで、販路拡大が見込まれる。
高級ビールのような「ちょっとしたぜいたく」が消費のキーワードになる中、既存ブランドの高級タイプを投入する動きもある。チルドコーヒー市場で約5割のシェアを持つ「マウントレーニア」の森永乳業は10月、既存商品より40円高い170円の「カフェラッテ プレミア」を発売した。コンビニを最も利用する30歳代男性が市場調査で「本格感」を求めていることがわかり、高級タイプの発売で新たな男性客を取り込む狙いがある。
森永乳業チルド・リテール事業部の稲見俊憲さんは、「予想の1・5倍の売れ行き。飲んでいただければ味の新鮮さが伝わる」と自信を示す。
缶コーヒーの成長に陰りが見えるうえに、チルドコーヒーは単価が高く、コンビニ側にとっても「売りたい商品」。そこで、ファミリーマートはチルドコーヒーの品ぞろえを強化し、独自ブランドの「パッソプレッソ」も展開。5週ごとに期間限定商品を発売するなど、コンビニならではのきめ細かい商品戦略を打ち出している。
チルドコーヒーは、殺菌の過程で加熱処理をしないことなどから、冷蔵での保存・流通が必要。ストローで飲むタイプが一般的で、缶コーヒーとは異なるスタイルで楽しめる。倒れても中身がこぼれにくいことから、オフィスでの需要も大きい。森永乳業の推計によると市場は4年連続で2ケタ成長し、18年度は約520億円に達している。