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座席配置、気分の持ち方…
乗り物酔い 上手に克服 意識し過ぎは逆効果 
  東京朝刊 by 頼永博朗
秋の行楽シーズンで、家族や友人らと遠出する機会も増えているのではないだろうか。でも、乗り物酔いになってしまっては、せっかくの旅行が台無し。車や飛行機、船舶を使って長距離を移動する際、乗り物酔いを防ぐ手段はいくつかある。最近は、水なしで飲める薬も市販されている。旅を楽しい思い出にするためにも、乗り物酔いを上手に克服したい。

乗り物酔い 上手に克服 意識し過ぎは逆効果
酔い止め薬を服用するのも乗り物酔いを防ぐ1つの方法だ=羽田空港(撮影・鈴木健児)

大画面テレビも
乗り物酔いは「動揺病」とも呼ばれる。車などに乗っている最中に次第に気分が悪くなり、最後には吐いてしまう不快な症状のこと。遊園地のジェットコースターに乗ったときや、家庭の大画面テレビで映像を見ているときにも、症状が出るケースがある。

「宇宙酔い」の専門家で、東京厚生年金病院耳鼻咽喉科部長の石井正則さんは「発症の正確なメカニズムは解明されていないが、感覚の混乱という単一の過程で引き起こされるものではない」と話す。

石井さんらの研究によると、乗り物酔いには3つの段階がある。(1)車などが予測しない動きをすると、耳の内部で感じる平衡感覚と視界に入る動きにズレが生じる(2)脳が「不快」と判断してストレスホルモンを過剰に分泌、自律神経が不安定になる(3)冷や汗や生つばが出て吐いてしまう−というものだ。

年齢とともに解消
乗り物酔いは一般的に3、4歳のころから始まり、小学校高学年から中学生でピークを迎え、その後は年齢とともに減っていく。

小中学生をバスに乗せ、都心を1時間走行した実験では、15年前には2割が発症したが、5年前は1割強だった。「車の性能が向上したことも関係しているのではないか」とみる石井さん。飛行機についても、「大型化に伴い、発症頻度は減っている」という。

では、乗り物によって酔いを避けやすい座席はあるのだろうか。バスは、乗用車と同様に前の座席は視界が広く、酔いにくいといわれる。飛行機では「揺れにくいのは、機体の中心よりやや前寄りの重心周辺」(日本航空)という。

波の上を進む船舶は、長い周期の揺れが特徴だが、船体の中央部分は揺れ幅が小さいとされる。ただ、「窓がなく景色が見えない船底が最も酔いやすいという聞き取り調査の結果はあるものの、科学的な分析では船体の上下・前後による差はあまりない」と石井さん。

不安をあおらない
市販の酔い止め薬は、吐き気を抑える抗ヒスタミン剤が代表格で、乗り物に乗る30分〜1時間前に飲む。最近は「どこでも服用できる」をうたった水なしで飲める商品が増えている。

ただ、酔い止め薬は眠気を促し、注意力が散漫になるので注意が必要。また、薬を車内に置きっぱなしにすると、車内の温度が上がり、薬の成分が変化する恐れがある。

一方、こんな実験結果も。ふだんは乗り物酔いをしない人を大型バスに乗せ、睡眠不足、空腹、車内での読書、急発進、急ブレーキなどの負荷をかけたところ、9割近くが発症。ところが、「乗り物酔いに効く」と言って、かたくり粉を服用させると、症状が抑えられたという。

石井さんは「まずは、出発前に体調を整えること。心理的な影響もあるので、『大丈夫?』『酔ったら言いなさい』と不安をあおらないこと。運転者は荒い運転をしないよう心がけることも大切」と指導している。

乗り物酔いの予防と対策(石井正則さん作成)
【出発前】
(1)睡眠を十分にとる
(2)体を締め付けない服装を心がける
(3)空腹・満腹状態は避ける
(4)軽い食事をし、消化の悪い食品は食べない
(5)出発の30分〜1時間前に酔い止めの薬を服用する

【乗車中】
(6)進行方向を向いて乗車する
(7)視線を下に向けることは避ける
(8)遠くの景色を見るようにする
(9)車内の涼しい換気に努める
(10)会話や音楽で気分を楽にする

【酔ってしまったら】
(11)ベルトや胸元のボタンを外して目を閉じる
(12)外の新鮮な空気を鼻からゆっくり吸って口から吐く
(13)可能なら停車して外へ出て休む
(14)氷を5〜10分に1個ずつなめる
(15)かんきつ類は症状が増すので食べない、飲まない
(16)吐いてしまったら、冷たい水で口をゆすぐ




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