文化庁の国語世論調査
怒りは心頭に…「発する」です 日本語の乱 「気にしない」過半数
7月27日(木) 東京朝刊
「怒り心頭に達する」という誤った慣用句を使う人が74・2%に達していることが26日、文化庁の「国語に関する世論調査」の結果で分かった。「怒り心頭に発する」と正しく使えるのは14・0%で、5倍の人が間違っていた。「従来から」「あとで後悔する」といった重複表現を気にしない人も過半数に達しており、日本語の乱れが懸念されている。

調査は2〜3月、全国16歳以上の男女3652人を対象に面接方式で実施。57・7%にあたる2107人から回答を得た。

誤用されやすい慣用句について二択でどちらを使うか尋ねたところ、激しく怒ることを意味する「怒り心頭に発する」という正答を選べたのは14・0%しかおらず、74・2%は「怒り心頭に達する」を使用すると答えた。「頭に来る」という類似表現があるため、その連想から「達する」と誤解されているようだ。

周囲に明るくにこやかな態度を取る意味の慣用句は「愛嬌(あいきょう)を振りまく」が正しいが、正解者は43・9%しかおらず、「愛想を振りまく」(48・3%)の方が上回った。愛嬌と愛想の意味が似ているため混同されているという。

曖昧(あいまい)な言い方をすることは「言葉を濁す」が正しいが、27・6%は「口を濁す」と回答した。また、我慢できない「腹に据えかねる」という慣用句は、18・2%が「肝に据えかねる」とした。

また、言葉の意味が重なる重複表現について気になるかどうかを聞いたところ、「従来から」は74・4%、「あとで後悔した」は54・4%、「一番最後」は50・5%が「気にならない」と回答した。

「敬語」難しい→67% だが使いたい→92%
国語に関する世論調査では、社会生活を営む上で敬語を使いたい人が92・5%に達しているものの、「難しい」と感じる人が67・6%いることが分かった。話し手が聞き手に上品な印象を与えるために使う美化語の「お」の使用をめぐっては、「弁当」に「お」をつけて話すのは女性の4分の3を占めたが、男性は4分の1にとどまっており、男女差もくっきりと表れた。

文部科学相の諮問機関である文化審議会の国語分科会は現在、敬語の指針を作成しており、今回の調査結果も踏まえて来年2月までに答申する方針だ。

敬語使用についての考えを聞いたところ、社会生活を営む上で「使いたい」としたのは92・5%で、「使いたくない」の6・2%を大幅に上回った。ただ、敬語が難しいと感じたことが「ある」のは67・6%で、「ない」(31・3%)の倍以上に達した。敬語を使う対象(複数回答)では、「年上」が82・7%と最も多く、「目上」「知らない人」「尊敬する人」が50%以上で続いた。

美化語の「お」をつけるかどうかを15の言葉について聞いたところ、「菓子」「酒」「米」「皿」「弁当」「茶碗(ちゃわん)」は「お」を付ける人が多かった。「酢」(43・1%)と「お酢」(44・8%)は拮抗(きっこう)した。

男女別に見ると、使用率はすべての言葉で女性の方が男性を上回った。特に、「弁当」「皿」「酒」「米」については、7割以上の女性が「お」を付けて話すが、男性の場合は4割未満で大きな男女差が表れた。

一方、「菓子」に「お」を付けるのは女性の85・2%、男性の60・1%。唯一、男性の使用率が過半数に達した。

業務終了時のかけ声を尋ねたところ、目上に「お疲れ様」を使うのが69・2%で「御苦労様」の15・1%を大幅に上回った。目下の人に「お疲れ様」というのは53・4%で「御苦労様」は36・1%。一般的には、目上に対し「御苦労様」を使うのは失礼とされるが、そのマナーが一応は定着していることがうかがえた。

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