フェンダーキティ、変身ベルト…
「キャラクターグッズ」大人向けに成長 新商品ジャンルに
7月26日(水) 東京朝刊 by 塩原永久
1本250万円−。三越日本橋本店(東京都中央区)で25日に発売されたキティデザインの高級ギターが、開店と同時に売れた。個人消費が広がる中、子供のころになじんだキャラクターの関連グッズが人気を集めている。そんなニーズに対応し、メーカーや百貨店も「マニア心」をくすぐる限定品を相次いで発売。玩具業界では新たな注目商品ジャンルにまで成長している。
■集客力抜群
三越がこの日開催したキティのイベント「さんりおin江戸」は、開店直後から異様な熱気。
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105万円の限定日本人形は10分で完売=三越日本橋本店 |
三越はキャラクタービジネスを展開するサンリオと共同で著名演奏家も愛用する米フェンダー社製のキティの絵柄入りの特製ギターを用意。中高年6人が購入希望の手を挙げ、最終的に福井市内の会社経営の男性(61)が手に入れた。このイベントの開催は昨年に続き2度目。「OLを中心に高い集客力がある」と、三越は「キャラクター集客効果」を指摘する。
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キティの250万円ギターに6人の中高年が名乗り=三越日本橋本店 |
キティグッズはこれまで、1000万円のダイヤモンド付き人形や約570万円のペンダントなどにも買い手がついた。「子供向け」だったキティグッズは、その子供の成長とともに、今では大人向けグッズとして市場を広げている。
■囲い込みに
キティに限らず、人気キャラクターグッズを中心に、玩具業界で「復刻ブーム」も熱を帯びている。バンダイが発売した仮面ライダーの「変身ベルト」は、3万円以上にもかかわらず売り切れ店が続出した。購買層は主に30〜40歳代。ほとんどの人が「子供のころを懐かしんで」(バンダイ)購入したという。
高級化路線を打ち出した同社の成功で「団塊ジュニア」前後の世代にメーカーが注目するようになり、業界では3万〜4万円の復刻商品の投入が相次いでいるほか、「将来のヒット」をにらみ、アニメのプロダクションなどのキャラクターの著作権を囲い込む動きも始まっている。
タカラトミーは昨年6月、タツノコプロを子会社化した。「ガッチャマン」など一世を風靡(ふうび)した“ヒーローもの”の名作を出してきたプロダクション獲得にタカラトミーは、「コンテンツ(情報の内容)の宝庫。力のあるキャラクターで有力な商品ができそうだ」と期待をかける。
■消費者心理
キャラクター市場が広がる背景には、「マニア向け」商品が珍品や、いわゆるお宝モノとして“市民権”を得てきた事情も重なる。
野村総研は昨年10月、マンガやカメラ、鉄道などの特定分野に強い関心がある「マニア消費者」の市場規模を調査。延べ約172万人、4110億円の消費があると推計した。北林謙主任コンサルタントは「マニアというより、商品にこだわりを持つ普通の人が増え、市場を支えている」と話す。「団塊ジュニアを中心に『キャラクターは子供のもの』という抵抗感がなくなった」ことも市場拡大に拍車をかけた。
キャラクターは「スキャンダルもなく、見る人にイメージを浸透させやすい」(玩具メーカー)利点があるとされる。玩具業界だけでなく、アパレルなどの異分野からも関連商品への関心は高まる。
市場には「消費者が幼稚になった」との指摘もあるが、今後、さまざまなビジネス分野で存在感を高めるのは確実だ。