明治43年開場 秋田・康楽館で話を聞く
中村勘三郎 芝居小屋巡りの夏
7月25日(火) 東京朝刊 by 生田誠
歌舞伎の中村勘三郎がこの夏、全国に点在する芝居小屋をめぐっている。十八代目襲名披露巡業の一環で、「役者の魂が入っている劇場でやりたかった」という勘三郎の思いがきっかけだ。7月7〜9日に公演が行われた康楽館(秋田県小坂町、明治43年開場)で、勘三郎に話を聞いた。

「ここは初めてなんですよ。うちのおやじが明治42年生まれでしょう。ひとつ年下だから、このくらい味がある。土地の人の意気込みがなかったら、これだけのものを建てられなかったでしょう」。勘三郎は天井を見上げながら話し始めた。

かつて鉱山の町として栄えた十和田湖に近い小坂町に残る芝居小屋。外見はモダンな洋風だが、館内は純和風で、すべて桟敷席だ。一時は映画館などとして使われていたのを修復したうえで芝居の公演が再開され、平成14年には重要文化財に指定された。現在も、歌舞伎や能などの公演が行われている。

勘三郎がひかれたのが、登場人物の距離が離れすぎない舞台の広さ。「見てよ。この寸法がぴったりなんですよ。(舞台上の)内証話が聞こえるくらいでしょ」。小声の会話でも、約600ある客席の後方まで届き、表情の変化なども十分に楽しめるという。

今回、昼の部「身替座禅」で山蔭右京、夜の部「義経千本桜」でいがみの権太を務めている勘三郎は、客席中央に通る渡り板を見て、「(いがみの権太は)ここから出てもいいね。『吉野山』みたいなスッポン(花道に設けられたセリ)を使ったものもやりたいね」。

康楽館での公演で花道を行く中村勘三郎=秋田県小坂町
康楽館での公演で花道を行く中村勘三郎=秋田県小坂町


古い芝居小屋独特の雰囲気に、芝居心をくすぐられた勘三郎は「東京まで来られない土地の人に(歌舞伎を)見てもらいたい。また、寄せていただきたい」と感慨深そうに話した。

芝居小屋での公演は、7月に康楽館のほか東座(岐阜県白川町、明治22年開業)▽明治座(同県中津川市、同27年)▽八千代座(熊本県山鹿市、同43年)を巡回。9月には、嘉穂劇場(福岡県飯塚市、昭和6年)▽金丸座(香川県琴平町、天保6=1835=年)▽内子座(愛媛県内子町、大正5年)▽相生座(岐阜県瑞浪市、昭和51年)を訪れる。

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