高価格戦略に転換 客足回復がカギ
マック復調は本物!? 新メニューで攻勢
7月21日(金) 東京朝刊 by 高橋寛次
日本マクドナルドは20日、「ピタ」と呼ばれる平焼きパンを使った新メニューを発表した。これまでのバーガーとは異なる具材や味で、期間限定ながら従来商品群よりも高価格帯に設定した戦略商品。売れ行きによっては“定番”メニューに加える。個人消費の拡大を背景に、かつて低価格戦略で業績低迷にあえいだ業界大手の日本マクドナルドが高付加価値・高価格戦略に舵(かじ)を切ることで、業界他社の戦略にも影響を与えそうだ。
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発売前のキャラバンカー宣伝を今回、初めて導入したマックの勝算は?=20日、東京都港区のマクドナルドお台場デックス店 |
8月4日に新商品として発売する「ピタマック」は、中東などで親しまれているピタに、チキンや野菜を挟み込んだ新型のバーガー。単品で290円、セットで590円と、高価格帯を鮮明に打ち出した。8月24日までの期間限定発売。
同じく限定商品から定番メニュー化した「えびフィレオ」の“二匹目のどじょう”を狙って、宣伝カーを使った全国試食イベントなど、これまでにない商品アピールも行う。
同社は低価格戦略で業績低迷に苦しんだが、主力メニューの値上げや、今年5月のセットメニューがヒット。「4〜6月、全店ベースでの売上高は前年比10・2%増となった」(原田泳幸会長兼社長)。既存店売上高をみると5カ月連続の前年比プラス。6月は11・6%と2けた増だ。
しかし、売り上げは回復する一方で、客数は5月以降、2カ月連続の前年割れとなった。「前年に100円メニューの導入で客足が伸びた反動」(コミュニケーション部)だ。3月まで14カ月連続で前年を下回っていた客単価が5月の値上げをきっかけに上昇に転じたことをみると、値上げの影響が顧客減少につながったともいえる。
顧客を引き戻すため同社は、24時間営業店を増やすほか、ドライブスルー店舗を優先した改装に乗り出した。「営業時間帯を延長し、来店客の掘り起こしにつなげる」(同社)ためだ。
今回のピタマックも「夜食やスナック代わりにも食べられる」(斎藤玄・メニュー開発本部上席部長)のが特徴で、深夜時間帯の来店客を強く意識したものだ。
ただ、価格帯を上げたことで客数が減少したことから、今回は「これまでにないバーガー」(原田社長)という、高付加価値戦略で顧客へのアピールを強める。
業界他社との「無理な競争」(業界各社)で展開してきた低価格戦略から、高付加価値商品と合わせた価格戦略は、日本での創業を担った“藤田マック”からの脱却を狙う戦略ともいえそう。また、業界大手の同社の価格戦略再構築は、同業他社の価格戦略にも波及しそうだ。