携帯電話
多機能化 一段落 次は速度アップ
7月20日(木) 東京朝刊 by 冨岡耕
携帯電話の多機能化がほぼ一段落した。音声通話に加え、カメラや音楽プレーヤーをはじめ、最近はテレビや定期券、クレジットまで搭載。各社の開発競争はハード面で一服する一方、今後は通信速度の向上によるサービスの多様化に軸足が移る。通信と放送の融合もにらみつつ、光ファイバーやADSL(非対称デジタル加入者線)並みの速度アップを照準に入れている。

KDDI(au)は音楽プレーヤーを搭載した携帯電話「ウォークマンケータイ」を、19日開幕した「ワイヤレスジャパン」で展示した=東京都江東区の国際展示場
KDDI(au)は音楽プレーヤーを搭載した携帯電話「ウォークマンケータイ」を、19日開幕した「ワイヤレスジャパン」で展示した=東京都江東区の国際展示場


「携帯電話はさまざまな機能がついた。今後の課題は高速化だ」

NTTドコモの中村維夫社長は、19日に都内で開幕した国内最大級のモバイル展示会「ワイヤレスジャパン」で講演し、高速化を次の開発課題のキーワードに挙げた。

まず、今年8月をめどに現行の第3世代「FOMA」の約10倍となる最大毎秒3・6メガビットの「HSDPA」端末を発売。フル楽曲のダウンロード時間が、従来の1分から7秒に短縮。さらに、平成21年に光ファイバー並みの「スーパー3G」、22年以降は現行比で約2600倍の最大毎秒1ギガビットの「第4世代携帯電話」を投入する開発スケジュールを掲げてみせた。

KDDI(au)もドコモに対抗。年内に最大毎秒3・1メガビットの携帯端末を投入する。手薄だった送信速度の引き上げが特徴。講演した小野寺正社長も「写真のやり取りなどが新サービスの要素になる」と鼻息は荒い。

一方、各社は、来年にも総務省が新規電波を割り当てる高速化通信技術「WiMAX」(ワイマックス)への対応も言明。移動中でも最大毎秒15メガビットの通信速度を確保でき、次世代携帯電話への搭載も検討する。

携帯各社が通信速度向上を競うのは、ハード面で横並びとなり、通信速度向上で可能なコンテンツ(情報の内容)やサービスが、顧客囲い込みのカギを握るからだ。

これまではカメラや音楽プレーヤーなど端末自体が需要喚起につながったが、当たり前の機能となり、差別化も難しい状況だ。カメラは300万画素に達し、「これ以上の画素数が必要かは疑問」(業界関係者)という。音楽プレーヤーをみても、auが6月に発売した「ウォークマンケータイ」はソニーブランドで人気だが、機能的な新味に乏しい。決済サービスでも「おサイフケータイ」が16年に登場。クレジットや定期券も追加投入したことで、主要な機能はほぼ網羅された。

高速化競争は過熱する一方だが、KDDIの小野寺社長は「技術先行ではなく、どのようなサービスを提供するかが重要」と語る。シャープ製端末で18日に大規模なソフト不具合が出るなど、利用者の視点に立ったソフト・サービスの提供が求められている。

携帯電話 メール利用85%
情報通信ネットワーク産業協会は19日、「携帯電話の利用実態調査」を発表した。拡充が著しい携帯電話の新機能や新サービスが、どの程度使われているかをアンケート。最も使われている機能はメールで85%が利用。着メロ64%、カメラ59%と、「付属して当たり前の機能」となった。新機能では、音楽プレーヤー機能が付いている携帯ユーザーのうち49%が実際に使用し、その92%が専用機の利用が減るか、使わなくなった。

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