ゲーテの大作
演劇集団円 橋爪功で「ファウスト」
7月18日(火) 東京朝刊 by 江原和雄
「世界文学の宝」ともいわれるドイツの詩人、ゲーテが生涯をかけて取り組んだ大作「ファウスト」を舞台化、演劇集団円が公演する。主演の橋爪功は「原作を読んだときこんなものやれねーよと思った(笑い)。的が大きい芝居です」と話している。
悪魔メフィストフェレスに魂を売る契約をし、若返った老学者ファウストの、冒険と享楽の遍歴を描く原作を舞台化するため、脚本は10回以上書き直された。円の演出家、平光琢也は「『行動してこそ運命が変わる』『危険の中にこそ満足の境地がある』というファウストと、観客の前に肉体をさらけ出すことで満足感を得る俳優という職業が同一化できれば、必ず何かが生まれると信じています」という。
ファウストは、すべてを体験しつくし、知的好奇心を満たそうとする、まさにファウスト的衝動に突き動かされ、盛んに動き回る。清純な乙女マルガレーテに恋し、ワルプルギスの夜の享楽に身をまかせ、メフィストフェレスとともにギリシャ神話の世界へ赴き女神ヘレナと結婚する。しかし、根底には善なる人間への信頼がある。
「年をとった橋爪が、ファウストをやりながらどんどん元気になっていく。突き進んでいくファウストのエネルギーがあちこちから吹き出しています。僕もそのエネルギーに突き動かされ、一瞬たりとも休んでいる暇はありません。私がえばって気取って演じても、ファウストにならないのは分かっています」と橋爪は笑った。