「ファン要望強い」 明け渡し無視、所有者は反発
深まる対立 バナナホール、ライブ強行へ
7月14日(金) 大阪夕刊
親会社の倒産のために今年4月に閉店した老舗ライブハウス「バナナホール」(大阪市北区)が、14日から営業を再開する。昭和56年にオープン後、年間6万人が訪れ、BEGINやシャ乱Qなどメジャーなグループを輩出した老舗で「ファンからの要望が強い」というのが理由だが、現在建物を所有するIT会社は「今後の予定がある」として明け渡しを求めており、それを無視した形。すでに完売したチケットもあり、ファンは歓迎ムードだが、所有者側は「憤りを感じる」と、損害賠償請求も辞さない構えで反発している。
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ライブを再開するバナナホール。朝からスケジュールを確認するファンも見られた=午前10時半、大阪市北区 |
バナナホールは、今年4月9日の公演を最後に閉店。所有するIT会社「EDコントライブ」(大阪市淀川区)は、音楽のネット配信などを行う新たな音楽施設をオープンさせる予定だったが、ゆかりのミュージシャンらが集まって6月中旬まで「籠城(ろうじょう)ライブ」と呼ぶ演奏を継続。このため先月14日には、ED社が建物の明け渡しを求める訴えを大阪地裁に起こしている。
今回の営業再開は、籠城ライブで多くのファンが集まり、口々に営業継続を求めたり閉店を惜しんだりしたことから、店側が「大阪の音楽文化や舞台文化を守るため、『バナナホール』は必要ではないか」と決定。14日午後7時からアーティスト数組が出演する。この日は建物明け渡し訴訟の第1回口頭弁論と同じ日になるが「単なる偶然。対抗するためではない」と説明している。
今後、9月末まで出演予定が決まっており、中にはチケットが完売するライブも。さらに28日には「バナナホール復活祭」の計画まで持ち上がっている。
こうした動きに、ED社は今月からビルを建て替え、音楽のネット配信などを行う新たな音楽施設としてオープンする予定だったが、計画は大幅に遅れており「待っていただいているアーティストやプロモーターに申し訳が立たない」と説明。
さらに、ホール再開が強行されることについて、「事故や火災が起きた場合に責任をどう取るのか」と憤慨。「裁判で正当に権利を主張し、司法判断に解決を委ねている」と主張している。
14日に出演予定のフォークシンガー、岡村雄大さん(41)は「再開の喜びというよりも、最後かもしれないという思いもある。何とか復活につながってほしい」と思いを込めて、ライブに臨むことにしているという。
■音楽評論家、日下部吉彦さんの話
「音楽ファンの一人として、多くのミュージシャンを輩出した実績のあるライブハウスに文化を守ってほしいという願いはある。ただ、営業再開を強行してホール側と所有会社が対立するのは穏やかではなく、双方がもう一度よく話し合い、円満な解決を図ってほしい」