「若い力」刺激に←→地域貢献で大学側アピール
「学生さまさま」企業お知恵拝借
7月13日(木) 東京朝刊
「このメニュー、もっとしゃれた名前にしたほうがいいですよ」

東武百貨店池袋店(東京)は平成17年から、50店あるレストランが参加して行う期間限定フェアの新メニュー開発に、東京家政大学(同)栄養学科の学生に参加してもらっている。

東武百貨店池袋店が開催したビューティーメニューフェアのメニュー紹介。担当した東京家政大学の学生が顔写真とともに、メニューの栄養価を紹介する

今年5〜6月に行われた「ビューティーメニューフェア」のメニュー開発には34人の学生が参加した。例えば「銀座 縁(えにし)」の「鰻(うなぎ)と笹身(ささみ)の生春巻」。料理長の案ではプチトマトを添え、鰻のたれをかける予定だったが、「もっと華やかで、ビタミンCが補えるものを」という学生の提案で、イチゴを添え、ソースはブルーベリーに変更した。「銀座 福助」は、海鮮と野菜寿司を組み合わせたメニュー名を「福助」から「畑と海の宝石箱」に変えた。

「われわれ男性には思ってもみない、斬新なアイデア。正直、合うのかなと思ったが風味も合い、女性客に好評でした」と「縁」の三堀幸弘店長は驚く。「どの店の厨房(ちゅうぼう)も40代の男性が中心。学生たちから新鮮な発想をもらって、若い女性客の好みや要望を店に取り入れてもらいたかった」と振り返る同百貨店、石田康一・スパイス営業部マネージャーの狙いがあたった形だ。

生き残りの一手
東京家政大では4年前、学生が大学で得た専門知識をボランティアとしていかせる場を提供する「ヒューマンライフ支援センター」を設置した。東武百貨店とのメニュー開発も同センターを窓口に参加を募った。

神奈川県三浦市が東京・神田にオープンした「なごみま鮮果」。明治大学の学生との共同運営だ

「少子化のなか、どこの大学も特色を生かして地域と連携することが欠かせない。学生が持つ感性や技能をいかして、地域のニーズや要望に応え、学生自身も社会から学ぶことができるいい連携の形となった」と担当の内野美恵講師は話す。

そもそも産学連携の事例は、大学が持つ知的財産を企業と連携していかしていく、という理化学系での話が主流だ。しかし、産学連携に詳しい経済産業研究所の元橋一之・ファカルティフェローが「学生数の減少に伴い、大学には教育だけでなく社会貢献など多角的な側面が期待されるようになっている」と指摘するように、“冬の時代”に突入した大学にとっては、地域貢献は今や1つの生き残りのキーワードになりつつある。

地域密着をPRすることでその存在感を高めると同時に、学生に高まる実学志向にも応える機会にしたいという思惑が大学にはあるようだ。

意欲的な学生の姿
大学に連携を求める側の狙いとしては、「学生の感性と行動力をいかした活動に期待している」(神奈川県三浦市の若沢美義・営業開発課長)という声が代表的。

三浦市では先月末、東京・神田に地場産品を扱う「なごみま鮮果(せんか)」をオープンした。店舗の運営やマーケティングなどを明治大学(東京都千代田区)の熊沢喜章・助教授(中小企業論)の2年生のゼミ生22人が主に行っている。

「三浦特産のマグロの看板を作って、頭の部分にあけた穴から顔を出して記念撮影ができるようにしたい」と同ゼミの高橋正和さん(19)が語るように、学生は意欲的。けなげに頑張る大学生の姿は、神田周辺の地元住民から「言葉を交わしてみると、けっこうしっかりしていて頑張っていると、前向きに評価してもらえるようになった」(熊沢助教授)という。

ほかにも、東京商工会議所が今年5月から、大学生らからコンペ形式で街づくりへのアイデアを募る事業を始め、第1弾として四谷地域(東京都新宿区)への提案を募ったところ、日大、法政大など7大学9チームから応募があるなど、大学生のアイデアを活用したいともくろむ現場はますます増えていきそうだ。

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