景気回復で強気の販売拡大作戦
チャーター便ツアー急増 景気回復で強気の企画
7月9日(日) 東京朝刊 by 花岡文也
旅行各社が今夏向けの海外旅行で、「チャーター便ツアー」を大幅に拡充している。旅行会社1社または数社で、飛行機の座席を丸ごと買い取ってツアーを組むもので、通常だと乗り継ぎが必要な国・地域にも直行できるメリットをアピールしている。見込み通りに集客できないと大赤字に陥るリスクはつきまとうが、景気回復のおかげで海外旅行熱が高まっていることもあって、旅行各社は強気の販売拡大作戦に打って出た格好だ。
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夏休み商戦に向けてチャーター便ツアーを拡大した旅行各社は、目的地直行の魅力をアピールする=東京都千代田区の近畿日本ツーリスト本社内支店 |
近畿日本ツーリストは6〜10月のツアー用に飛行機計158便の座席の全部または一部を買い取り、約6000席を確保した。前年同時期の約3500席から7割増やした。通常は直行定期便のないハンガリーのブダペストにひとっ飛びし、バスで世界遺産の中欧の街並みを見学したあと、チェコのプラハから帰国するツアーや、オーストラリア中央部にある世界最大級の一枚岩「エアーズ・ロック」にほど近い空港に直行するなどのユニークなツアーを企画した。
日本旅行も7〜10月はチャーター便を前年の19便(約5400席)から25便(約6500席)へと大幅拡大し、カナダのカルガリーへのツアーなどを用意、移動時間が短縮できるチャーター便ならではの特徴をアピールする。
JTBも7〜9月に全座席を買い取るチャーター便を昨年より1割増やして95便確保。中欧行きを昨年の1便から8便に増やすなど力を入れている。
こうしたチャーター便を使うツアーは、定期便が飛んでいない国や地域にも直行でき、「移動時間が短縮する分、現地でのイベント見学などを増やすことができる」(近ツー)。また、「飛行機の座席を大量に安く確保するため、ツアー価格も通常より2割近く安くできることもある」(日本旅行)という。
航空会社は採算の合わない国・地域への定期便運航を取りやめる動きを強めているが、これが逆に、チャーター便ツアーにはプラスに働くこともある。
近ツーは、「かつて定期便があった路線には着実に潜在的な旅行客がおり、チャーター便ツアーに集客できる」と指摘する。
国土交通省によれば、国内旅行は交通手段の発達や多様化で日帰りが可能になったことなどから伸び悩みが続いたものの、海外旅行は平成15年にイラク戦争や新型肺炎(SARS)の影響で一時的に落ち込んでも、混乱が終息するとすぐに回復している。さらに日本旅行によると、「景気回復の効果などで、今年1〜6月の海外旅行者数は前年同期に比べて4.8%増えている」とか。
通常ツアーなら、旅行会社は飛行機座席を押さえたあと、集客状況次第でキャンセルも可能。だが、「チャーター便ツアーは座席が埋まらないと大赤字。ハイリスクハイリターン」とあって、旅行会社は売り込みに必死になっており、旅行客はツアー商品を賢く選ぶ必要がありそうだ。