妊婦や乳幼児に影響?
大豆イソフラボン 過剰摂取“待った”!
7月6日(木) 東京朝刊 by 森浩
体に良いとして人気を集めている「大豆イソフラボン」が揺れている。厚生労働省などが食事以外で摂取する1日の上限量を打ち出したほか、健康被害を未然に防ぐため、業界の指導に乗り出した。過剰摂取で健康への「デメリット」が指摘される大豆イソフラボン。消費者に求められるのは、「ほどほどな摂取」のようだ。

1日30ミリグラム以下
内閣府食品安全委員会は、大豆イソフラボンを含む特定保健用食品(トクホ)について5月、「食事以外の1日の上限摂取量は30ミリグラム」とする方針を示した。過剰摂取が「健康に与える影響を否定できない」ことがその理由だ。これを受け厚労省では先月、トクホだけでなく、大豆イソフラボンを含む錠剤や粉末剤といった「健康食品」についても「安全性を考慮すると同様に扱う必要がある」として、業界を指導するための指針案をまとめた。

指針案では、摂取目安量のほかにも、(1)過剰摂取を避ける(2)妊婦、授乳中の女性、乳幼児は摂取しない(3)受診中の人は医師に相談する−などといった注意書きの記載を求めている。8月以降に正式に指針を策定し、業界団体などに通達する予定だ。厚労省では「超えるとすぐ健康被害が出るわけではないが、長期的に大量にとると健康を損なう可能性がある」としている。

豆腐や納豆はOK
大豆イソフラボン摂取量規制の動きが広がる背景にあるのは、需要の急激な拡大だ。

日本能率協会総合研究所MDBの調べによると、「現在利用しているサプリメントは」という質問で、「大豆イソフラボン」は3年前には20位以内にもランクインしていなかったのが、昨年は10位(12・5%)になるなど、ここ1、2年で急速に浸透している。

と同時に体への悪影響を指摘するデータも集まってきた。食品安全委によると、大豆イソフラボンには乳がんや骨粗鬆(こつそしょう)症などの予防効果があるとされるが、妊娠動物を用いて、高濃度の大豆イソフラボンを投与した結果、「胎児の生殖機能への影響などを示唆する報告があった」という。

また閉経後の女性の場合、過剰に大豆イソフラボンを摂取すると、子宮内膜増殖症を発症しやすくなることも報告されている。

ただし、同委員会では「大豆製品を食べていけないというわけではない」と強調。豆腐や納豆といった大豆食品については「これまで習慣的に食べていて、健康被害の報告はない」などとして、摂取に制限枠は設けていない。

「自衛」が必要に
摂取量を規制する動きが広まるが、消費者としても“自衛”が必要かもしれない。

国民生活センターが5月に、「大豆イソフラボンを多く含む」とうたう健康食品24商品を調査した結果、パッケージなどに表示された「1日の最大摂取目安量」が、食品安全委が定めた上限値(30ミリグラム)を超すものが14商品あった。

いずれもドラッグストアやインターネットなどで簡単に手に入る商品で、上限値の倍を超える商品も2商品あった。同センターでは「使用量を確認して、長期的な過剰摂取は避けて、摂取量を調整した方がよい」と呼びかけている。

栄養食品の業界団体である日本健康・栄養食品協会(東京)健康食品部の石田幸久さんは制限を設ける動きについて、「いろいろな学説があり、(業界を指導するための指針案は)残念な面もある」としたうえで、「安全性や有効性を裏付けるデータを用意する必要があるかもしれない」とし、業界側でも調査・研究を進めたいという考えを示した。

大豆イソフラボン  大豆、特に大豆胚芽(はいが)に多く含まれる複数の化学物質の総称。女性ホルモン(エストロゲン)と化学構造が似ていることから、植物性エストロゲンとも呼ばれる。納豆や豆腐などの大豆食品のほとんどに含まれていて、骨粗鬆症の予防や更年期障害の軽減などに有効と言われている。
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