脳内因子、NGF数値を測定
“恋心”科学的に納得
7月2日(日) 東京朝刊 by 坂本鉄男
「あんなに熱烈に愛し合っていたのに、半年で別れるとは」などとビックリなさるには及ばない。恋とは本質的にそういうものなのだから…。
昨秋、イタリア北部のパビア大学の研究グループが「恋に陥ったばかりのカップル」、「6カ月たったカップル」、「長い付き合いのカップル」という3種類のカップルの脳内での化学反応を調査した結果を発表した。
それによると、恋心の源は、これまではアルツハイマーなどの病気の原因の研究対象となってきた、NGF(Nerve Growth Factorの略)という脳内因子にあるという。愛し合って数カ月の熱々カップルのNGFが227単位に上昇しているのに対し、6カ月以上のカップルのNGFは一様に123単位に低下してしまっているという。
一方、アルツハイマーはNGFの欠落が原因とみられているが、アルツハイマーと恋心が同じ因子に影響されるとは情けない。ただ、どちらも「痴呆状態」に陥ると思えば納得もいく。
このほか、同じNGFが男女関係に長期的に作用する働きも持っているらしいとも言うから、ややこしい。つまり、「愛は永遠」とか、「焼けぼっくいに火がつく」といった表現も、NGFに結びつければ、科学的理由が成り立つわけだ。悲しいかな、われわれは「一目ぼれ」の時代から「ボケ」の時代に至るまで、一生、NGF因子に振り回されているような気がする。