回線賃借、独自コンテンツ
セレブ仕様の携帯サービス 日本企業が米展開
7月1日(土) 東京朝刊
携帯電話関連技術のフェイスは、富裕層向け携帯電話サービス「Voce(ヴォーチェ)」のアンテナショップを7月に米カリフォルニア州ビバリーヒルズにオープンする。米携帯電話事業者のシンギュラー・ワイヤレスから通信設備を賃借し、独自端末と付加価値を付けたMVNO(仮想移動体通信事業者)サービスを行う。日本企業が海外でMVNOサービスを手がけるのは初めて。フェイスは事業形態を変えて日本での展開も視野に、次世代携帯電話事業サービスを展開する。
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「口コミ」による顧客開拓のために高級デパート「ニューマンマーカス」に展示を始めたフェイスの携帯電話=米ビバリーヒルズ |
ヴォーチェの契約料は1000ドル(約11万4000円)で、月額の利用料は定額制の400ドル(約4万6000円)。モトローラ、ノキア製端末をベースにした特製端末を設定、使い方などスタッフが自宅まで出向いて説明する。
また、電話帳の自動バックアップ、旅行やレストラン予約サービスなどのほか、盗難・紛失時の即時対応、年1回の端末の無料交換など、至れり尽くせりのサービスだ。
対象は年収10万ドル以上の富裕層500万人。通信設備を借りるMVNOサービスはコストが高いため「収益を確保するためには富裕層しかないと判断した」(中西正人専務)。9月以降は、サンフランシスコ、シカゴ、マイアミなどに広げ、来年11月までには採算分岐点である4万加入の達成を見込む。
1999年に英国で始まったMVNO携帯電話サービスの加入件数は米国で1400万件に達している。急成長の裏には既存携帯事業者のサービスへの不満が多いことにある。フェイスが迅速な顧客対応を売り物にするのはこのためだ。
独自コンテンツを売り物にする事業者も多い。英多国籍企業ヴァージン・グループが展開するヴァージン・モバイルUSAは、自社の音楽専門番組MTVのコンテンツをあらかじめ組み込んだ携帯端末を前面に出し300万を超える加入者を獲得。ユニバーサル・ミュージックが大株主のAmp,dモバイルも独自の音楽・動画コンテンツを強みに、サービス開始4カ月で2万2000人の加入者を獲得。ディズニーも参入を発表した。
将来的にはコンテンツで稼いで無料で携帯電話サービスを提供するMVNOも登場するといわれており、米市場は2010年には3500万加入に成長すると予測されている。
既存事業者の力が強い日本でのMVNOサービスはデータ通信が主流。しかし、12年ぶりに携帯電話事業への新規参入が認められた通信各社が、自社だけでは新規加入者獲得が厳しいために、さまざまな企業に回線を提供する検討を進めており地合いが整いつつある。また、総務省もMVNO方式による新規参入に本腰を入れ始めた。
フェイスの米国進出は、こうした日本の動きを踏まえたもので、「独自端末製作やコンテンツ配信のノウハウを獲得して、新規参入を希望する企業に提供する」(中西専務)と新たな競争時代に照準を合わせている。