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ルキーノ・ヴィスコンティ監督 |
イタリア映画の巨匠、ルキーノ・ヴィスコンティ監督の生誕100年を記念し、代表作3作品を上映する「ヴィスコンティ生誕100年祭」が10月7日からテアトル タイムズスクエア(東京・新宿)で始まる。
ヴィスコンティ監督は1943年に「郵便配達は二度ベルを鳴らす」でデビュー。76年の遺作「イノセント」までの33年間に長編14本と中短編、共同監督作品5本を残した。
ヴィスコンティ監督の魅力は、スクリーンに文学、音楽、演劇、オペラを集大成させたところだといわれる。今回、上映される3作品は中後期の代表作で、いずれもその映像の美学が凝縮された傑作ぞろいだ。
孤独に逃避し破滅する「ルートヴィヒ」のルートヴィヒ二世、放蕩(ほうとう)ざんまいの果てに自滅する「イノセント」のトゥリオ、そして「山猫」の静かに滅びゆくサリーナ公爵−−。敗れ去る主人公たちは、監督自身にも重なる。イタリア・ミラノの名門貴族、ヴィスコンティ家の出身。中期以降は自らの身分でもある貴族社会の盛衰、没落を描くことに集中した。
悲劇の結末が多いが、その先の人間への信頼と未来に賭けてもいた。
すでに前売り券が発売されており、3作品のなかでは「ルートヴィヒ」が人気だという。日本での劇場公開は古いものから64年「山猫」、79年「イノセント」、80年「ルートヴィヒ」と続く。
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「山猫」 |
「試写会では40、50代の方が目立ちました。映画史上の伝説とも言われるのが、『山猫』の全編約3分の1を占める大舞踏会シーン。劇場の広い視界で観たいという方が多いようです」と配給会社、クレストインターナショナルの広報部は話す。
76年にローマの自宅で息を引き取ったヴィスコンティ監督。ことしは没後30年目にあたる。
リアリズムに裏打ちされたセットや衣装、様式美あふれる世界と、鋭い人間への洞察力は時代を超えて圧巻だ。11月2日まで。
上映3作品 物語
「山猫 イタリア語・完全復元版」(1963年)ヴェネチア国際映画祭・パルム・ドール受賞作
シチリアの名門貴族の当主、サリーナ公爵は一族の時代の終焉(しゅうえん)を感じていた。娘のコンチェッタは、サリーナの甥、タンクレディに恋するが、タンクレディは新興ブルジョワの娘、アンジェリカを愛した。新旧交代の潮流のなか、サリーナは娘よりもタンクレディの幸福を願い、大舞踏会は幕を開けた…。
「ルートヴィヒ 完全復元版」(1973)
「地獄に堕ちた勇者ども」(69)、「ベニスに死す」(71)と合わせて退廃三部作と呼ばれる。18歳で国王に即位したルートヴィヒ2世は、ドイツの作曲家、リヒャルト・ワーグナーに心酔し、オーストリア皇后、エリザベートを恋慕う。が、想いは通じず、芸術と孤独に逃避していく。ヨーロッパ一美貌の王と言われるが、40歳でなぞの死を遂げた。その美醜を俳優、ヘルムート・バーガーが渾身の演技で魅せる。
「イノセント 完全復元&無修正版」(1976)
ヴィスコンティの遺作。裕福な貴族トゥリオ・エルミルには美しく従順な妻、ジュリアーナがいながら、伯爵夫人、テレーザ・ラッフォを愛人にしていた。トゥリオの弟、フェデリコが有名な作家、フィリップ・ダルポリオをジュリアーナに紹介する。やがてジュリアーナはダルポリオの子供を身ごもる。それに気づいたトゥリオは再び、ジュリアーナに情熱を抱くのだが…。