渡辺淳一原作
「愛の流刑地」 深く、怖い「性愛の極み」
東京朝刊 by 上塚真由
男女の性(さが)を赤裸々に描いた渡辺淳一の「愛の流刑地」が映画化される。主演は寺島しのぶ、豊川悦司で、性愛の極みを余すとこなく表現する渡辺文学に挑戦した。東京都内で行われた製作発表会見は、役に入り込む2人の妖艶で熱っぽい雰囲気に包まれた。
|
映画「愛の流刑地」製作発表会見(撮影・高橋朋彦) |
売れない作家、村尾菊治(豊川)は人妻の冬香(寺島)に出会い、急速にひかれあう。菊治との逢瀬で感性を解放していく冬香は死を求めるようになり、菊治は情事のさなかに冬香を殺害する。この情念的な“殺人”はどう裁かれるのか−。
菊治が冬香の首を絞めるシーンから始まり、濃密なラブシーンが展開される。寺島は「何もかもさらけ出した。豊川さんに優しくカバーしていただき、危うく好きになりそうになりました」と話し、感極まって涙する一幕も。一方の豊川は「これが撮影なのか、現実なのか分からないぐらいリラックスした。心と体を使って人を愛しているさまは、受け入れてもらえると確信している」。
菊治を追及しながらも共感を覚える検事に長谷川京子、冬香の夫に仲村トオル、菊治の理解者で出版社重役に津川雅彦という豪華な出演陣が作品をもり立てる。
また、原作には登場しない冬香の母親を富司純子が演じる。“親子共演”に富司は「こういう役を演じる女優に育ってくれてうれしい」と目を細めながらも、不倫愛に走る娘にブレーキをかける役柄は「実生活と同じような感じ」と周囲の笑いを誘った。
メガホンをとるのは、テレビドラマで数々の賞に輝いた鶴橋康夫監督。映画初挑戦で、「一字一句辞書をひくように原作を読んだ。寺島しのぶと一緒になって、豊川と心中するつもりでやっている」と情熱的に作品への思いを吐露する。
原作は平成16年11月から今年1月まで日本経済新聞に連載され、5月に単行本が出版された。現在、本紙で連載小説「あじさい日記」を執筆中の渡辺も会見に駆けつけ、「最近は若い人向けの映画が多いが、大人の純愛の強さ、深さ、怖さをとことん表現してほしい」と期待を寄せた。
来年1月13日公開。
産経Webは、産経新聞社から記事などのコンテンツ使用許諾を受けた(株)産経デジタルが運営しています。
すべての著作権は、産経新聞社に帰属します。(産業経済新聞社・産経・サンケイ)
(C)2006.The Sankei Shimbun All rights reserved.