「アガサ・クリスティーの奥さまは名探偵」
理想の夫婦が謎解き 初の仏単独映画
9月7日(木) 東京朝刊 by 松本明子
今年はミステリーの女王アガサ・クリスティの没後30年。クリスティ作品の映画化は過去に30本近くあるが、名探偵ポアロやミス・マープルは有名でも“おしどり探偵トミー&タペンス”の活躍はあまり知られていない。日本で17年ぶりのクリスティ映画となる「アガサ・クリスティーの奥さまは名探偵」(9日公開)。知的でエレガントなヒロインを演じた仏女優、カトリーヌ・フロは「セカンドライフを楽しむ夫婦の姿は、日本の高齢者にとっても理想の姿でしょう」と話す。
日本公開されたクリスティ原作の映画は別表の通りだが、ほとんどが米英作品。「奥さま−」は、「親指のうずき」が原作の初の仏単独映画となる。美しく広がる田園風景を舞台に、フロ演じる好奇心旺盛な奥さまと仏の名優、アンドレ・デュソリエ演じるおっとり気味のだんなさまとのおしどり探偵ぶりを描いている。
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ヒロインを演じた仏女優カトリーヌ・フロ(撮影・松本明子) |
「仏でも高齢化問題はもちろんあるわ。女性は100歳くらいまで生きられるでしょ(笑)。ユーモアあふれる会話が続くこの夫婦はある意味、理想のカップルね。クリスティ作品は15歳から読んでいるけれど、遊び心のある“おかしな残酷さ”を感じる。例えば、死でさえも客観視して描くところから美的感覚が生まれる」
仏国内では200万人動員のヒットとなり、パスカル・トマ監督はシリーズ化も考えているという。フロ自身は「好奇心旺盛な日常生活から脱出したい」と笑う。幼いころから絵が好きで、芸術家になりたかったそうだ。映画のなかでも絵画が重要な役割を果たす。
日本映画では、小津安二郎監督の「東京物語」が一番好きだといい、「70代の日本男性といえば、笠智衆さんが真っ先に浮かびます。現代社会では忘れられている沈黙とゆったり感。あの簡素な力には文学と同じくらいの感銘を受けます。巨匠ですね」。落ち着いたしゃべりは、映画そのままのエレガントさだった。
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