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新世代の描いた戦争 韓国映画「トンマッコルへようこそ」 
パク・クァンヒョン監督に聞く
10月27日(金) 東京朝刊 by 岡田敏一
昨年、韓国で年間興行収入1位を記録した「トンマッコルへようこそ」が28日から公開される。朝鮮戦争の最中、架空の理想郷トンマッコル村に迷い込んだ連合軍、韓国軍、人民軍(北朝鮮)の3組の兵士が戦争の愚かさに気づくというユニークな物語。パク・クァンヒョン監督は「宮崎アニメ的要素を取り入れ、従来の韓国の戦争映画にはない希望を感じさせる終わり方にしたことが受けたのでは」と話す。

映画「トンマッコルへようこそ」のパク・クァンヒョン監督
映画「トンマッコルへようこそ」のパク・クァンヒョン監督


朝鮮戦争の真っただ中、自給自足で争うことなくのんびり暮らすトンマッコル村に、連合軍の米国人パイロット、韓国軍の逃亡兵、人民軍の敗残兵の3組の兵士が迷い込む。最初は敵意むき出しでいがみ合う彼らだが、心豊かに生きる村人の生き方に接するうち、民族間の対立や戦争の愚かさに気づく。ところがそんな中、連合軍が村一帯の爆撃を決定する…。

これまでの韓国の戦争映画といえば、「大抵、暴力的な要素が強く、結末は悲劇的だった」。そうした作品とは180度違う発想で作り上げた。「従来の作品は、実際に従軍した人の経験が大きなベースになっている場合が多いですが、私は逆に従軍していない者の強みとして豊かな想像力を生かした作品をめざしました。戦争の客観視は困難だし、実際に従軍した人々にとってこの映画はあり得ない物語なんですが…」と説明する。

戦争の背景にある冷徹な論理や本質を描いていないと指摘する向きもあるが、「論理で解決できない問題を解く“ファンタジー”という武器」をもとに、徹底的な反戦映画を作り上げたという。

「戦争は、巨大な権力が何かを奪い、制圧するという行為から生まれるもので、犠牲者はいつも庶民です。その事実を描きたかった」と訴える。

これまでCM監督として活躍してきたクァンヒョン監督の長編映画デビュー作。有名な韓流スターも熟練のスタッフも参加していないが、韓国では朝鮮戦争を知らない若者を中心に約800万人が映画館に足を運んだ。

「技術的に未熟な部分もあるが、全スタッフが情熱を持ってこの作品に集中してくれたので完成度の高いものになった。もっとも、熟練のスタッフは人件費が高く掛け持ちも多いという事情もあって…」と笑いを誘う。

「映画の楽しさはスティーブン・スピルバーグ監督の作品、映画を製作するうえでの思想や想像力の働かせ方は宮崎駿監督の作品から学びました。人間を深く描くということでは、今村昌平監督の『楢山節考』(1983年)は素晴らしい作品だと思います」

学ぶ姿勢を失わず、人間を温かく見つめるクァンヒョン監督は、韓国映画界を支える新世代の映画人といえそうだ。

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