産経Webへ戻る
ENAKってどういう意味? | お知らせ | 新聞バックナンバー購入 | 問い合わせ | リンク・著作権 | MOTO | 産経Web
“ロビー活動”が新鮮
拝金米国笑い飛ばす 「サンキュー・スモーキング」
10月13日(金) 東京朝刊 by 岡田敏一
業界の利益のため政治家に種々の働きかけをするロビー活動を、たばこ業界の敏腕ロビイストの目を通して面白おかしく描いた映画「サンキュー・スモーキング」が14日から、公開される。「米国の政治はロビイスト抜きでは成立しない」(ケネディ元米大統領)という“ロビー大国”の現状を笑いでぶった切る注目作だ。

映画【サンキュー・スモーキング】

ニック(アーロン・エッカート)は「タバコ研究アカデミー」という団体の敏腕ロビイスト。テレビの討論番組に出演すれば、「喫煙で亡くなる人は交通事故による死亡者数よりずっと少ない」「未成年者の喫煙防止キャンペーンに多額の費用を投じている」と言葉巧みに喫煙を擁護。ガンによる放射線治療で髪の毛がなくなった少年さえ味方に付ける口八丁手八丁ぶりで、嫌煙派から忌み嫌われている。

友人であるアルコール業界の女ロビイスト、ポリー(マリア・ベロ)、銃製造業界のロビイスト、ボビー(デヴィッド・コークナー)と3人でいつも「操縦士のミスで飛行機が墜落したら、航空会社ではなく(製造した)ボーイング社を責めるのか?」などと毒づき合っている。

そんな中、嫌煙派の急先鋒(せんぽう)、フィニスター上院議員(ウィリアム・H・メイシー)が、すべてのタバコの外箱にドクロマークの添付を義務付けることを画策。これを知ったニックはハリウッドに出向き、大物エージェント、ジェフ(ロブ・ロウ)に、カッコいい喫煙シーン満載の映画製作を依頼するなど大忙し。ところが、ニックの1人息子、ジョーイ(キャメロン・ブライト)は父の仕事に疑問を抱く…。

原作は、米人気小説家クリストファー・バックリーのベストセラー「ニコチン・ウォーズ」(1994年)。米国では今年3月に公開され、約2400万ドル(約28億円)を稼ぎ、「米政府のなりふり構わない情報操作文化を愉快かつ痛烈に皮肉っている」(米ニューズウィーク誌)などと評価も高かった。

監督は、今回が映画デビューとなるジェイソン・ライトマン。「ゴーストバスターズ」(84年)のアイヴァン・ライトマン監督の息子である。

業界と政治との癒着は米国だけでなく、日本でも何度も事件になったりしている問題なのだが、ロビイストが職業と認知されているのが米国らしいところか。だが、この映画は、そうした現状を真顔で批判したり、説教したりするのではない。「結局、みんな金のためにやってること」というシニカルな視点で笑い飛ばしているところが気持ちいい。

ロビー活動という言葉になじみのない日本では分かりにくいギャグもあるが、米国の徹底した拝金主義や情報操作の巧みさに驚かされるだろう。

産経Webは、産経新聞社から記事などのコンテンツ使用許諾を受けた(株)産経デジタルが運営しています。
すべての著作権は、産経新聞社に帰属します。(産業経済新聞社・産経・サンケイ)
(C)2006.The Sankei Shimbun All rights reserved.

ここは記事のページです