典型的なフィルム・ノワール
ブラック・ダリア デ・パルマが放つ衝撃作
10月13日(金) 東京朝刊 by 岡田敏一
米ロサンゼルスで起きた未解決の猟奇事件を題材にした「ブラック・ダリア」(ブライアン・デ・パルマ監督)が14日から公開される。真っ二つに切断された女優志望の女性の全裸死体が野ざらしにされていたという衝撃的な事件は数々の小説や映画になってきたが、デ・パルマ監督が重厚な作品に仕上げた。
1947年1月、ロス市内の空き地で腰から切断された女性の死体が見つかった。内臓はえぐり取られ、口も引き裂かれていた。女性はマサチューセッツ州出身のエリザベス・ショート。女優をめざして4年前にロスにやってきたものの、売春婦まがいのすさんだ生活を送っていた。黒のドレスが好きだった彼女は、当時の人気映画のタイトル「ブルー・ダリア」をもじって「ブラック・ダリア」と呼ばれた。
この事件をロス市警特捜課の2人の刑事、ブライカート(ジョシュ・ハートネット)とブランチャード(アーロン・エッカート)が追う。元プロボクサーでリングでたたかったこともある2人。そこにブランチャードの恋人レイク(スカーレット・ヨハンソン)や被害女性を知る謎の女性リンスコット(ヒラリー・スワンク)が絡み、複雑な物語が展開する…。
原作は米小説家ジェイムズ・エルロイの“暗黒のLA4部作”第1作。エルロイ自身、幼少期に実母が惨殺されるという辛い体験を持ち、第1作はそれを色濃く反映した異色の作品といわれる。ちなみに第3作「L.A.コンフィデンシャル」は97年に映画化され、アカデミー賞2部門を獲得している。
典型的なフィルム・ノワール(1940〜50年代に米国で製作された退廃的で悲観的な犯罪映画の総称)作品だが、傑作スリラー「キャリー」(76年)で見せた観客をスクリーンにくぎ付けにする凝った撮影技法や、アル・パチーノ主演の「スカーフェイス」(83年)での過剰な暴力描写を想起させる場面も。デ・パルマ監督のファンなら違った楽しみ方ができるだろう。
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