産経Webへ戻る
ENAKってどういう意味? | お知らせ | 新聞バックナンバー購入 | 問い合わせ | リンク・著作権 | MOTO | 産経Web
コチコチの共和党員を嘲笑?
米で「自虐映画」大当たり 「ボラット」
10月16日(木) 東京朝刊
【ロサンゼルス=松尾理也】カザフスタン国営放送のリポーターが全米を旅するという架空の設定に基づいたドキュメンタリー映画「ボラット(原題)」が、公開から2週連続で全米映画興行収入ランキング1位という、予想外の大ヒットとなっている。外国人の主人公によってあぶり出される米国人のこっけいさや偽善ぶりに観客は腹を抱えるのだが、自虐的とも言える映画のヒットは、米国の何を意味しているのだろうか。

「ボラット」は英国人コメディアン、サシャ・バロン・コーエン主演のコメディー。オープニングからの興行収入はすでに約6800万ドル(80億円)に達した。

リポーターのボラットが米国を見て回るというもので、実際に保守派政治家や、宗教右派の教会、女性の権利団体などを訪れて「取材」して回るというストーリー。ボラットは女性差別主義者かつ反ユダヤ主義者という設定だ。ボラットが行く先々で女性差別や反ユダヤ的発言や行動を取り米国人があわてふためく中で、次第に米国人自身の「隠された素顔」があぶり出されていくという趣向だ。

こうした米国人自身を笑いものにする自虐的な作品がヒットした理由については、さまざまな見方がある。米紙ロサンゼルス・タイムズは先の中間選挙と結びつけて、「ヒットの理由は、ボラットの餌食になる米国人がほとんど共和党(寄りの人々)であるということだ」と分析。中間選挙で共和党が大敗したことを引き合いに出し、「(映画に登場する)コチコチの共和党員たちを残りの米国人は突然、笑いものにし始めた。そして選挙でも投票しなかった」と揶揄(やゆ)した。

もっとも女性の権利団体などリベラル寄りの人々も、この映画では存分にちゃかされている。米誌ニューズウィークは、「撮影中は常に、やり方が公平かどうか自問し続けた」とする監督の言葉を紹介した上で、「この映画はリベラルと保守との双方へのロールシャッハ・テスト(無意味な模様が何に見えるかを答えさせ、性格や精神状態を診断する検査)だ」と論じている。

ただ、製作にあたっては、ほとんどは事前承諾を得ないまま撮影に入ったと思われ、映画公開後、登場人物から「だまされた」として訴訟も起こされている。カザフスタン人リポーターの設定も差別的だが、米国内ではこの点についての反省はほとんどみられない。

産経Webは、産経新聞社から記事などのコンテンツ使用許諾を受けた(株)産経デジタルが運営しています。
すべての著作権は、産経新聞社に帰属します。(産業経済新聞社・産経・サンケイ)
(C)2006.The Sankei Shimbun All rights reserved.

ここは記事のページです