「青いうた〜のど自慢青春編」
金田敬監督、映画デビュー作「地方都市にエール」
5月31日(水) 東京朝刊 by 戸津井康之
青森県むつ市を舞台に展開する、歌を愛する中学生たちの青春群像劇「青いうた〜のど自慢青春編」(金田敬監督)は、7年前に公開された井筒和幸監督の「のど自慢」の“青春版”。金田は師匠の井筒から「泣きどころ、笑い所がはっきりしたプロの仕事をしろ」と叱咤激励された。Vシネマでは30本近く監督しているが、劇場長編としては今回が金田のデビュー作だ。

「青春は決して甘くなく現実は厳しい。でも、力いっぱい生きる青春は素晴らしいということを、映像で伝えたかった」と金田は言う。

《むつ市の中学校3年生、達也(濱田岳)は問題を起こして留年中。間もなく、一つ年下の弟、良太(冨浦智嗣)と同級生として卒業式を迎える。良太は心身に生まれつき軽い障害がある。歌が好きで卒業パーティーで歌うことを楽しみにしているが、誰からも相手にしてもらえない。達也は嫌々、良太やガールフレンドの恵梨香(寺島咲)と友人の4人で歌うことに。良太が「歌いたい」と持ってきた曲は達也が幼いころに歌い、カセットテープに録音したまま残っていた「ケ・セラ・セラ」だった…》

「シリーズといっても井筒監督版と同じことはできませんからね。主人公を思いきり若くして青春ものにしようと決めました。若者だけでなく、幅広い世代に味わってもらう青春を描こうと…」

兄弟役の2人、濱田と冨浦はドラマ「3年B組金八先生パート7」(04年)で同級生役で共演している。が、実際は濱田が3歳年上。濱田は「始めは“お兄ちゃん”と呼ばれることが照れくさかったけど同級生役よりも自然でした」と話し、冨浦も「ずっと同級生役だったから現場で戸惑ったけど、自然と本当のお兄ちゃんのような存在になっていました」と振り返る。

撮影中、2人は同じ宿泊部屋で過ごし、ロケ中は常に一緒だったという。金田の配慮だった。2人の配役に金田がこだわったのは「今風の若者ではない“昭和の子供の匂い”を感じたから」だという。

全国をロケハンし、海と緑に囲まれた北の街、むつ市を選んだ。日本の原風景の中で、青春や人情を描きたいと思ったのだ。「主だった産業を持たないむつ市のような田舎町は全国に存在する。そこには達也のような大都会で夢を叶えようともがく子供たちの青春がある。そんな子供たちに向けて“地方都市がんばれ”とエールを送りたい」。金田にとってこの作品はそんな応援歌でもある。

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