陳凱歌監督の映画「無極−プロミス」
汚れる秘境 映画ロケ誘致…ゴミ放置 中国・雲南省
5月14日(日) 東京朝刊
【北京=福島香織】中国の南部にあり、秘境とされる雲南省シャングリラの景観が、日本でも話題になった陳凱歌監督の映画「無極−プロミス」のロケで破壊された可能性が浮上し、国家環境保護総局がこのほど調査に乗り出した。現地からの報道では海抜4000メートルの撮影現場はロケ・チームが残したゴミだらけという。製作側やロケを許可した地元政府に対する厳罰を求める声も高まっている。
中国ではこの2、3年、映画やテレビのロケによる自然破壊例が増えており、映像美のために自然美を平気で犠牲にする有名監督やスターらの傲慢(ごうまん)さとともに、多額の撮影許可費を得た上、観光地宣伝にもなるロケ誘致を環境保護より優先する地元政府の姿勢に非難が集まっている。
5月10日、中国中央テレビが放送した現地ルポによれば、まだ雪の残るシャングリラの景勝地、碧沽天池周辺には、セットとして使われた幅46メートル、高さ13メートルの鉄鋼の構造物や壊れた木橋がそのまま放置。周辺には弁当のプラスチック容器、ペットボトル、ポリ袋などが散乱していた。また、湿地での撮影のための足場に使用された大量の木材もそのままになっていた。
こういった状況を受け、国家環境保護総局環境アセスメント局の祝興祥局長は、雲南省環境保護当局に現地の破壊実態の調査をさせ、事実なら処罰を考えていることを明らかにした。「無極」製作代表、陳監督の妻で女優の陳紅さんはこの問題について「地元政府が後片付けをすることになっていた」とし、製作側の直接の責任を否定している。