DVD化 山崎貴監督インタビュー
「『ALWAYS 三丁目の夕日』はSF」
5月10日(水) 大阪夕刊 by 戸津井康之
日本アカデミー賞12部門など国内の映画賞レースを総ナメにした「ALWAYS 三丁目の夕日」。長野県出身で昭和39年生まれの山崎貴監督にとって、東京タワー建設中の33年は未知の世界だった。が、次に目指すのは、はるかに時代をさかのぼる戦国時代だという。邦画界を支える若きクリエイターの“映像術”を聞いた。
「三丁目の夕日」以前の作品といえば、「ジュブナイル」(00年)、「リターナー」(02年)などいずれも近未来SFだった。戦後の東京の下町を描いた「三丁目の夕日」は、大転換のようだが、じつはそうではないという。「僕にとっては前作までと同様、製作手法のアプローチこそ違うが、一種のSFであったことは間違いない」
そのSF的手法には、CG技術の駆使はもちろんだが、アナログ的な仕掛けの数々も加えられた。「路地裏など当時の町並みを再現したセットの角ではスタッフが実際に炭火をおこし魚を焼いていたり…」。決してその様子がカメラのフレームに入ることはない、こんな細工が現場に臨場感をもたらした。
加えて、俳優の心理にも影響した。主演の吉岡秀隆は「現場に入ると自然にタイムスリップできる。監督が『一緒に昭和33年に遊びに行こう』と誘ってくれるような毎日でした」と話していた。明日に希望を抱く日本人を活写してロングランヒットしたのは、CG頼りではない手法も大きな理由だろう。
「時代劇に興味があるんです」と話す山崎。「『三丁目の夕日』を前段階のステップとして位置付ければ違和感はないはず」と、にやりと笑う。これまでに培った手法は、髷を結った人間たちが闊歩する戦国時代でも有効だと自信を深めた。
山崎にとってCGは表現のための補助であって主役はあくまで俳優。監督としていかに俳優、スタッフを“本気”にさせるか。作り手が同じ方向に向かい本気になった時に初めて観客の胸を打つ感動作が生まれると、確信している。