「やわらかい生活」 主演・寺島しのぶ&廣木隆一監督
個性派コンビの新作 タッグ、さらに強力
6月23日(金) 大阪夕刊 by 戸津井康之
ヒロインに寺島しのぶを抜擢(ばってき)し、廣木隆一監督がメガホンを執ったロードムービー「ヴァイブレータ」から3年。名コンビが再び、新作「やわらかい生活」を完成させた。ところが寺島は「とくに廣木組の女優という意識はないですよ」と言えば、廣木も「比べられるのが嫌だから前作と真逆の撮り方をした」と意味深に答える。“天の邪鬼”な個性派2人に聞いた。
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「私たちって名コンビ?」と笑う寺島しのぶ(左)と廣木隆一監督。が、「次は2人でもっと高いハードルを目指したい」と意欲を見せた |
手持ちのデジタルカメラで撮った「ヴァイブレータ」は、廣木も寺島も、互いに手探り状態。完成直後、廣木は「同じチームで違う女性像をもう一本。次はどっしり三脚を構えた“芝居”を撮ろう」と決めたという。だから「演技が巧みな寺島にこだわった」。
寺島は「実は舞台では2回目が一番難しいといわれているんですよ」と苦笑しながらも、「脚本が抜群に面白く、すんなりと成り切れた。群像劇というスタイルも新鮮でした」と語る。
《35歳の優子(寺島)は元一流企業のOLだが、両親と親友を亡くしたショックから鬱病(うつびょう)を患い、人生が狂い始めていた。心機一転しようと東京の下町・蒲田に引っ越すが…》
現場で廣木は「ちょっと違う。もう一回」と繰り返し演技を要求した。寺島は「具体的にどう違うか、監督は絶対に言わない。2本目だから分かるけど悔しいから意地でも聞かない。少しズラして演じてみたり」といたずらっぽく笑う。
廣木は「うまい役者が、現場の空気感の中で、芝居を膨らませていってくれるのが実は映画現場の醍醐(だいご)味。寺島は共演者をのせながら、それができる貴重な女優なんです」と、演出意図を明かした。
現代女性の普遍的な姿を描く、強力“タッグ”。次回作も期待される。寺島が「3本作ってようやく認知されると思う」と言えば、廣木も「ハードルが高くなる。だからこそ楽しい」とやる気十分。2人はすでに、“臨戦態勢”に入っていた。