「スタンド・バイ・ミー」と同じオレゴン州の小さな町で
「さよなら、僕らの夏」少年の孤独と緊張リアルに
6月9日(金) 東京朝刊 by 松本明子
青春映画の名作「スタンド・バイ・ミー」から20年。「さよなら、僕らの夏」(10日公開)は、「スタンド−」と同じオレゴン州の小さな町で、10代の少年少女が経験するひと夏の出来事を描く。
内気で心優しい少年サム(ローリー・カルキン)は、体格のいいわがままな同級生ジョージ(ジョシュ・ペック)からいじめに遭っていた。弟思いの兄ロッキー(トレヴァー・モーガン)は自分の友人やサムの女友達ミリー(カーリー・シュローダー)を誘い、ジョージへの復讐(ふくしゅう)を企てる。そして、川下りのためボートに乗り込んだ6人に、悲劇が待ち受けていた。
重苦しいドラマはボートという狭い空間の密室劇から始まり、ぐいぐいとスクリーンに引き込まれていく。監督デビューとなり、脚本も兼ねるヤコブ・アーロン・エステスは、自らも若いころにいじめを受け、相手に対して復讐も考えたこともあったと明かす。
ただ、突き詰めて考えていくと、「私の何が彼に影響を与えてしまうのか。いじめっ子の心理に興味を持ち、これらを考えることの方に夢中になった」。そして、「いじめる子は典型的な悪者ではなく、ひとりの人間である」という答えに到達した。そんな監督の探求心もあり、映画は決して陰湿ではなく、リアルな心情を生み出している。
「言っちゃいけないことを言ったんです」
最後にポツリとつぶやくサム役のカルキンは、「ホーム・アローン」で知られるマコーレー・カルキンの弟。7人兄弟の末っ子で現在16歳。孤立した少年の不安や緊張感をちょっと伏し目がちにうまく演じている。