映画「ブレイブストーリー」
千明孝一監督 手書きアニメが持つ手作り感覚を優先
7月20日(木) 東京朝刊
【岡田敏一=ロサンゼルス】宮部みゆき原作の人気ファンタジー小説をアニメ映画に仕立てた「ブレイブストーリー」(公開中)は、最新のコンピューター・グラフィックス(CG)技術を駆使し、2次元(2D)と3次元(3D)を融合したユニークな映像が特徴。千明(ちぎら)孝一監督に話を聞いた。
主人公は11歳の少年ワタル(声・松たか子)。父が家出し、心労で母が入院する状況のなか、廃虚のビルで見つけた「運命の扉」を開く決心をする。転校生ミツル(ウエンツ瑛士)によると、扉の向こう側に行けば願いが1つかなうという。ミツルに続き、ワタルも扉の向こう側に。不思議な冒険の旅が始まる…。
テレビアニメなどで実績がある千明だが、映画は「ようこそロードス島へ」(1998年)に続き2作目。「宮部さんの小説のファンだったので、ぜひやりたい仕事だった」とはいえ、「約1000ページの物語を約1時間半にまとめるため、脚本に1年半もかかりました」と打ち明ける。
悩んだのは、ターゲットの選定だった。「子供向けか、大人向けか、家族向けか。結局、家族向けの作品にしました。そのため、原作にあるミツルの過去の残酷なシーンを極力抑えました」と振り返る。
一方、映像は手書きのアニメが持つ手作り感覚を優先させた。「2Dと3D、そして古典的な手書きアニメの要素をバランスよく混在させることができた」と胸を張る。また、物語の展開にも注意を払い、回想シーンやイメージシーンに心血を注いだ。前半に出てくる「ワタルとミツルが夜の神社で心を通わせようとする」場面は自身も納得のでき映えだとか。
フジテレビの長編アニメ映画事業第1弾で、全世界で公開される予定だが、「世界で勝負なんておこがましい。いろいろな要因がうまく重なっただけ。ツイていただけですよ」と冷静だ。
最後に成功の秘訣(ひけつ)を尋ねると、「才能のある人は多いんですが、根気がなかったり、プライドが高くて結局、自分に言い訳して逃げちゃう人をよく見かけます。依頼された仕事を相手の要求通りに仕上げる。逃げないでやり切る。これしかないですね」。仕事師の凄(すご)みとプライドをチラリとのぞかせた。