大人向けファンタジー
椿山課長の七日間
7月7日(金) 東京朝刊 by 松本明子
浅田次郎の同名小説を映画化した「椿山課長の七日間」が先月、クランクアップした。突然死した中年のサラリーマンが3日間だけ現世に戻ることを許され、絶世の美女となって“黄泉(よみ)”がえる大人のファンタジー。浅田が「書いている最中に、映像にしたらかなわんじゃないのかな、とふと思った唯一の作品」と語るように、原作者自身が早くから映画化を予想した作品である。
主演は「“あて書き”はしないのですが、私の作品のほとんどに登場します。はまる人です」と西田敏行。テレビドラマ「角筈にて」「天国までの百マイル」「ラブレター」に続く4作目で、映画は初の浅田作品となる。
椿山課長(西田)はある日、脳出血のため突然死する。やり残した仕事、家族…未練がありすぎた。「僕自身、数年前に心筋梗塞(こうそく)で倒れ、『まさか、今日が俺の命日?』と覚悟した経験がある。映画の椿山は心の準備がないまま逝った人だが、家族や仲間たちが彼に寄せる愛情やきずなの深さを描き、許す気持ちというものを教えてくれる」と西田。
一方、美女役の伊東美咲は「“同一人物”なので一緒に仕事をすることはなかったのですが…」と笑いながら、「2人とも福島出身なので、福島弁も入れてみようか、などとまめに連絡を取って仕事に臨みました」という。
監督は、フジテレビ系のドラマ「古畑任三郎」シリーズ、「白い巨塔」などを演出、今年「子ぎつねヘレン」で劇場映画デビューを飾った河野圭太。浅田は「死は誰にでも訪れる避けがたい宿命。だが、読者から『小説を読んで死ぬのが怖くなくなった』という意見もいただいた。最後に苦悩を解決するようなオチもあります」と話していた。11月に公開される。