娘・寺島しのぶとの“競演”も話題
映画「待合室」主演 富司純子に聞く
12月25日(月) 大阪夕刊 by 福本剛
東北の小さな駅の待合室に置かれた「命のノート」。見知らぬ旅人の喜怒哀楽の思いに、せっせと返事を書き続けた女性がいた。板倉真琴監督が実話をもとに撮った映画「待合室」。話題となったのが、ヒロインの和代を富司純子が演じ、若き時代を実の娘、寺島しのぶが演じる、つまり母娘共演を果たしていることだ。「『動』の演技をした娘に対し、晩年の(私が演じた)和代は平凡な日常を送る。それを『静か』に表した」と話す富司に話を聞いた。
|
映画「待合室」では、旅人の思いが記されたノートに返事を書き続ける女性を演じた((C)2006「待合室」製作委員会) |
「娘ながら素晴らしい女優だと思う。大胆で感性がある。でも、互いに女優として出たときは、親子ではありません」。娘を女優として認める一方、自身の女優魂も演技でみせつけたという。
舞台となった岩手県・小繋(こつなぎ)駅で実際、真冬にロケーションを行った。雪深い地の厳しさと温かい待合室の美しい対比は、デジタル映像でリアルに映し出された。
「きれいな場所だった。そして、そこに生きる人をモデルにしているから、イメージを壊さないよう、髪形や着る物、雰囲気にこだわった」
往年の映画ファンなら任侠(にんきょう)シリーズ「緋牡丹博徒」の「お竜」が懐かしいが、最近はさらに演技の幅を広げたよう。今年だけでも「待合室」以外に、「フラガール」、「犬神家の一族」、「愛の流刑地」(1月13日公開)と話題作への出演が相次いだ。「いろんな女性をやらせていただいた。女優の魅力は、役の女性の人生を生きられることです」と語る。
「待合室」では、「命のノート」に書き続ける和代の心情をこまやかに演じる、抑えた姿が印象的だ。「淡々とした人の営みのなかで、命の大切さ、希望、温かさを感じてほしい」。さらに、いじめや自殺といった世相に対し、「必要とされていない人はいない。生きていればきっといいことがある。それを、映画が教えてくれるはず」と言葉に力を込めた。共演にダンカン、斉藤洋介、市川実和子ほか。大阪・テアトル梅田で公開中。
産経Webは、産経新聞社から記事などのコンテンツ使用許諾を受けた(株)産経デジタルが運営しています。
すべての著作権は、産経新聞社に帰属します。(産業経済新聞社・産経・サンケイ)
(C)2006.The Sankei Shimbun All rights reserved.