辛口批評並んでも興行成績好調
「ゲド戦記」ネット評判と大衆ヒットをめぐる考察
8月17日(木) 大阪夕刊
スタジオジブリの新作『ゲド戦記』が不評らしい。少なくともネット界隈(かいわい)では、辛口の批評が並ぶ。評判の悪かった前作『ハウルの動く城』を上回る酷評ぶりだ。
だがネットでの評価とは裏腹に、実際の客入りは良好のようだ。公開2日間での観客動員数は67万人に達し、配給会社の東宝は、興行収入100億円突破という強気の姿勢を崩していない。
なぜネットではかくも評価の低い作品が、成績良好なのか。この現象をめぐり、同じく上映中のアニメ『時をかける少女』が単館上映ながら好調、ネットでは絶賛に近いという好対照の状況とも相まって、あちこちのブログで議論が交わされている。
まず、メディアの煽動(せんどう)力が、ネットに圧されていると捉える立場がある。大量の広告宣伝を集中投下することで、世間の話題とすることはできても、その中身まで偽ることはすでにできない。それはメディアの煽動に対するネット世論の勝利である…というわけだ。
これに対して、現実には『ゲド戦記』と『時をかける少女』の興行成績は桁が違う。ネットのムーブメントはとてもマスを動かすには至らないではないかと、冷水を浴びせる議論も有力だ。
おそらく、どちらの意見も間違ってはいない。同じようにネットで評判の悪かった先日の亀田世界戦の一件を見ても、従来型のメディア戦略がネットにうまく対応していないのは確かだろうが、現実に視聴率なり観客動員数なりの数字を稼げている。
ネットで盛り上がったコンテンツが商業的に成功するケースは今や珍しくないが、大衆的な大ヒットとなるとまた別の方法論が必要となる。ネットの可能性と限界を考えさせられた一件だった。(磨)
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