『オウエンとムゼイ』
ベッキーが写真絵本を翻訳 「無償の愛」感じて
東京朝刊 by 上塚真由
赤ちゃんカバと老いたゾウガメが親子のような絆で結ばれた実話をもとにした写真絵本『オウエンとムゼイ』(NHK出版)。今年3月に米国で出版され、20万部のベストセラーに。このほど出版された日本版では、タレントのベッキーが翻訳を手掛けている。
本作が翻訳家デビューとなるベッキーは、「赤ちゃんカバが陸ガメにぴったりと寄り添う表紙写真を見た瞬間、『ぜひやらせてください』とお願いしました」と話す。
2年前のスマトラ沖地震。ケニア南部に暮らしていた赤ちゃんカバのオウエンは地震の影響で群れからはぐれ、自然公園で保護される。そこで推定130歳のアルダブラゾウガメのムゼイに出合い、次第に元気を取り戻していく姿が伝えられる。
「翻訳では、オウエンやムゼイを動物扱いせずに、2人という風に表現するなど、同じ仲間として扱うことを心掛けました」とベッキー。
この本が話題になったのは、生態学上、哺乳(ほにゅう)類と爬虫(はちゅう)類が心を通わせることが珍しいからだ。だが、片時も離れることのない2匹の写真を眺めていると、そんな疑問は消えて、ただ、強い絆に心を動かされる。
ベッキーは犬3匹のほか、サル、カメ、蛇を飼っているという大の動物好き。絵本から学ぶことは何だろうか。「無償の愛ですね。親や友達と思っているのか、見返りを求めずに、愛情を注いでいる。人間はすぐに損得を考えてしまう。オウエンとムゼイは動物を代表して、人間にメッセージを伝えてくれている。絵本からぜひそれを感じ取ってほしい」と続ける。
米国では、災害やテロで親を亡くした子供たちの心のケアにも使われているという絵本。何かと悩みの多い人間社会に、さわやかな希望を与えてくれる。
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