21日公表された平成18年度学校保健統計調査で、子供の「肥満化」に歯止めが掛からない現状が示された。食生活の乱れや食材の変化、運動不足など理由はいろいろ挙げられ、国も自治体も対策を講じてきたが、肥満児、肥満傾向児童は今年度も増えた。特に、なぜか東北地方で肥満傾向が強くうかがえるなど「東高西低」がくっきり。メタボリック(内臓脂肪型肥満)症候群の時代、「子供の肥満」対策も急務だ。
調査結果で年齢別の肥満児の出現率を見ると、男子は、5歳で2・57%、7歳で6・22%と増え始め、9歳で10・83%と1割を突破。ピークは15歳の13・52%で、9〜17歳で10%超の状態が続く。女子で10%を超えるのは12歳の10・16%と15歳の10・06%で、男子ほどの肥満化はみられないが「男女とも昭和52年度以降、一貫して上昇傾向が続いている」(文科省)。
地域別でも大きな差が出た。男子の15歳での出現率を都道府県別に見ると、全国で最も低いのは埼玉の8・71%。次いで静岡の9・13%で、10%を割り込んだのは群馬(9・14%)と熊本(9・91%)を含め4県だけだ。
一方、最も高いのは秋田の21・43%で、5人に1人に肥満傾向が見られる。47都道府県のうち、15歳の肥満傾向が15%を上回ったのは北海道、青森、岩手、秋田、山形、福島、栃木、徳島の8道県で、「東高西低」ぶりが鮮明に表れた。
理由について文科省担当者は「正確なことは分からない」と首をひねっている。
「寒さで運動不足」影響?
子供の肥満の割合が全国トップクラスの秋田県。県保健体育課では「秋田の子供は身長も体重も平均を上回り体格がいい。正確な分析はできていないが、それが肥満児の多さにもつながっているではないか」と話す。県は平成13年に策定した「健康秋田21計画」で肥満児を7%に抑える目標を掲げているが、達成は厳しいという。
秋田市の小児科医で、市教委と連携しながら小学生の体格について調べている大野忠さん(73)は「東北の肥満傾向は、やはり冬の運動不足が原因ではないか」と分析する。大野さんによると、秋田市内の子供は、冬を経た春の調査結果に比べ、秋の調査結果の方が体格がスリムになる傾向があるという。
あきた病院(秋田県由利本荘市)小児科の白崎和也医長は「秋田では都市部より郡部で子供の肥満が多い。遺伝的な要因もあるが、学校が遠くて親が車で送迎することが多いことも運動不足の一因ではないか」と話す。
日本食育協会の鈴木雅子理事(福山平成大学客員教授)は「日本では食事の内容や生活環境の均一化が進んでおり、東高西低の原因を断定するのは難しい」と不思議がる。その上で、「寒い地域では外に出て遊ぶより家の中にいる時間が長くなる。当然食べ物を口にする機会は増える」と推測する。
女子より男子に肥満が多いことについては「女の子の場合、親も本人も幼稚園の時から容姿を気にしてダイエットする。男の子が容姿を気にし始めるのは小学校高学年と遅いため」とみている。
鈴木理事は「最近の子供は動きたがらず、動物性脂肪と糖質が高くて、軟らかいものを好む。対策には具体的な食事内容と運動量に関する詳細な調査が必要だ」と指摘している。