【ロサンゼルス=松尾理也】「キリスト教徒以外への配慮を欠く」として、「ハッピー・ホリデーズ」などと言い換える傾向が強かった「メリー・クリスマス」という言葉が今年、米国で顕著に復活している。多民族国家として、少数派の文化や宗教の尊重を強調する「多文化主義」に対する揺り戻しが起きている形だ。
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クリスマス用の飾り付けが行われている米・ニューヨークのデパート「メイシーズ」のショーケース(AP) |
「ハッピー・ホリデーズ」といった言い換えはこのところ、米国ですっかり定着。デパートなどでは、店員に対して「お客様にメリー・クリスマスと言わないように」と指導することが日常化している。さらに公立学校や空港など公共の場所では、クリスマスツリーや宗教的な飾り付けが禁じられることが多く、宗教色を消し去る動きも進んでいる。
ところが、米最大の小売業、ウォルマートは今年、クリスマス商戦の飾り付けや広告に「メリー・クリスマス」との言葉を復活させた。昨年、「ハッピー・ホリデーズ」との言い換えを行って、保守派から抗議を受けたためだ。
ウォルマート広報担当のジャミ・アームズ氏は「顧客の意見に耳を傾けたということ。売り上げを伸ばそうという計算ではない」と説明するが、昨年、ウォルマートに対して繰り広げられた不買運動の教訓が、今年の決定をもたらしたことは間違いない。保守派の反発は、ウォルマートだけでなく、Kマート、メイシーズといったスーパーやデパートにも及んでいる。
不買運動を行った団体の一つで、4年前から「クリスマス」という言葉の復活を目指す「自由評議会」(本部・フロリダ州)は、クリスマスツリーや装飾を校内で禁止したマサチューセッツ州の小学校でもツリー設置の復活にこぎつけるなど、働きかけを活発化させている。
今月7日には、ブラント・ミズーリ州知事が「メリー・クリスマスと言っても州職員は何ら問題とされることはない」とコメントするほど、国内では一部で過敏にもなりつつある。
オンライン・ギフトショップの「ギフトバスケットデラックス・コム」は、同社が扱うクリスマス・プレゼントのうち、「クリスマス」と明記したものは、2004年の42%から今年は73%に伸びたとし、「クリスマスを政治利用してきたことへの反動が起きている」と指摘している。
クリスマス「検閲」に怒り
マシュー・スティーバー自由評議会会長の話 米国では、世俗化が進行するなかで、キリスト教精神が攻撃されるという「文化の衝突」ともいえる事態が起きている。だが、大部分の人々は、たとえ世俗的であっても別にキリスト教を敵視したりはしない。
ところが一部に、公共の場でクリスマスを祝うのは憲法に反すると考える人々がいる。そういった人々が、繰り返し主張するために、人々は何となくそういうものかと信じてしまう。
こうした世論操作に対抗するため、われわれは各企業のクリスマスに対する姿勢を採点するキャンペーンを展開している。クリスマスの「検閲」に、我々は怒っている。