クリスマスの季節、家々の屋根や壁、庭を電飾で飾り、聖夜ムードを競う住宅街が大阪近郊で増えている。最近は、発熱が少なく長持ちするLED(発光ダイオード)の普及で、イルミネーションも手軽になったという。一方で、そんな“手作りルミナリエ”を見学に来る車で渋滞が起きるなど、閑静で美しい住宅街を悩ませている。
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洋風住宅にイルミネーションで装飾された兵庫県三田市のワシントン村 =兵庫県三田市学園
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住宅イルミネーションの先駆的な街として知られる兵庫県三田市の住宅街「ワシントン村」は、数十万円をかけて欧米から飾りを取り寄せたり、業者に依頼し、クレーン車まで借りて電飾を施すなど、熱の入れようは半端ではない。「12月は電気代が5万円跳ね上がる」(住民の一人)ほどで、引っ越してきたばかりの若い夫婦は「参加するのはここの住民になる通過儀礼のようなものでしょうか」と話す。
街開きした平成4年の冬、軒先のモミの木に住民有志で電飾を施したことがきっかけで、今年で15回目のクリスマスとなる。友人と来た大阪府豊中市の主婦は「あちこちの住宅地で電飾をしているが、ワシントン村にはかなわない」と話す。
大阪府堺市南区庭代台。ツリーをイメージしたものから、サンタクロースやトナカイ、列車やスノーマンをかたどったものまで、個性豊かなイルミネーションが楽しめる。
4年前、庭代台に引っ越してきた当初から飾り付けをしているという会社員、本田庄三さん(49)によると、飾り付けする家は年々増加。今では70軒ほどに増えた。「隣近所と一緒にやったほうが相乗効果があっていい」という。
こうした街は、関西の郊外で増え、大阪府内でもほかに、枚方市や高槻市、松原市などの住宅街で飾り付けがエスカレートしている。
家庭での屋外電飾が盛んになったのには、半導体を使ったLEDの普及が一役買っている。
東急ハンズ心斎橋店によると、今年、店頭に並んでいる家庭用の電飾は約150種類。価格は2800円から3万円で、青や白などまばゆい光を放つLEDが人気だ。同店販売促進の藤原弘毅さんはLEDについて「3年前から店頭に並び始めたが、年々、売り上げは伸びている」と話す。
人気の背景について「省エネ、省電力、長寿命というLEDの特徴が大きく作用している」と分析。これまでの白熱球などに比べ、電気代がかからないだけでなく、発熱も少なく樹木や外壁を焦がす心配が少ないのがメリットだ。今年は従来の青、白に加え、黄色やピンクのLEDも登場。藤原さんは「飾り付けのバリエーションがますます増えるのではないか」と話す。
繁華街とは違う家庭的なクリスマス気分が味わえる「住宅街イルミネーション」だが、各地の“名所”がテレビやインターネットで紹介されて見物客が押し寄せ混乱するケースも増えている。
ワシントン村では、県内外から押し寄せる見物客の一部が庭先にゴミを散らかし、電飾を盗むなどの被害が相次ぎ、自粛ムードも広がった。
約100戸のうち電飾する家庭は平成9、10年ごろをピークに少しずつ減り、今年は7割程度。ある住民は「見に来てほしくない人も出てきて、電飾に熱心な家庭とそうでない家庭と二極化が進んでいる」と話す。
それでも、三角屋根が夜空に映える時間になると、車がひっきりなしにやってくる。
庭代台では週末になると狭い道路が大渋滞。2年前には接触事故も発生し、泉北署では週末パトロールを行っている。「電飾をつけてから、道路に落ちているたばこの吸い殻が増えた」(主婦)と嘆く声も聞かれる。
ワシントン村の自治会長、小笠原一禎さん(37)は「自粛で明かりが少なくなってきたのは寂しい。マナーを持って眺めてもらえればありがたい」と話している。