高速道路のサービスエリア(SA)に、コンビニエンスストアが次々と出店している。「どこにでもある」イメージのコンビニ店だが、SAは旧日本道路公団の民営化を機に、出店のハードルが低くなったばかり。オフィスビルや大学など、競合店がない出店先を開拓してきた大手各社は、SAを「駅ナカ」に続く“一等地”と期待。独自サービスを競い合っている。
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店頭で豆をひいた「本格派コーヒー」が自慢のミニストップ=名神高速道路の草津パーキングエリア(滋賀県)(撮影・塩原永久) |
ローソンは11月、SAやPA(パーキングエリア)に計10店の出店を決めた。ファミリーマートも来年夏までに14店を出す予定。最大手のセブン−イレブン・ジャパンは5月、埼玉県八潮市の首都高速の八潮PAに初出店し、今後も積極的に出す方針という。
出店ラッシュの背景には、昨年、道路公団が民営化されたことがある。従来は公団と深い関係にあった「ファミリー企業」がテナントに優遇される傾向があったが、SAを管理する公団の後継会社は収益重視の運営に転換。コンビニ店を積極誘致するようになった。
大手チェーン各社も、住宅街にある一般の店とは、ひと味違うサービスを打ち出している。
ローソンは佐賀、福岡両県にまたがる九州自動車道の基山PAで、約10平方メートルの「リラクゼーションコーナー」を設置。外部の業者に業務委託し、マッサージのサービスを有料で実施する。
ファミリーマートが九州自動車道の須恵PA(福岡県)に出した店では、携帯トイレなどのカー用品を約40種類そろえた。店舗前にオープンカフェを設け、「疲れたドライバーにひと息ついてもらう店づくりを心がけた」という。
本格派コーヒーを打ち出すのがミニストップだ。名神高速道の草津PA(滋賀県)の店では、店頭で豆をひいたオーガニック(有機)コーヒーを提供する。薬剤師を常駐させ、同社では初めて薬の販売も手がけた。商品に対する客の反応や、運営手法を探る「実験場の意味合いもある」という。
既存店が低迷しているコンビニ各社はこれまでも、ライバル店がなく、商圏の客を独り占めできる場所への出店を探ってきた。駅ナカやオフィスビル、大学などへと広げ、最近は造船工場や卸売市場の敷地内に店を出すケースも出てきた。
住宅街では1店あたりの商圏は4000人前後だが、SAなら休日の利用者が数万人に達するところもあり、「一般の店と比べ、1日あたりの売上高が2倍に達する所もある」(大手チェーン)という。
各地の高速道の管理会社は、500カ所あるSAやPAの3割前後にコンビニ店を誘致する意向。コンビニ各社は、出店先を確保するだけでなく、サービスの独自性をめぐる競争にも、さらされることになりそうだ。