主人公は39歳
アニメ「天保異聞 妖奇士」 武器は“漢字”と斬新さ
東京朝刊 by 安田奈緒美
江戸を舞台に描かれる伝奇仕立てのTBS系のアニメ「天保異聞 妖奇士(あやかしあやし)」(土曜後6・0)。主人公は39歳と、アニメのヒーローにしてはやや年をとっている印象、さらに漢字から武器を取り出して魑魅魍魎(ちみもうりょう)と戦うという今までにない設定で、独特の世界観を築く。数々のヒットアニメにかかわってきた脚本家やプロデューサーによる話題作が注目を集めている。
天保14年の江戸の町で、元武士の竜導往壓(りゅうどうゆきあつ)が妖怪退治の集団に加わり、個性豊かな仲間と力を合わせて妖怪を倒していくというストーリー。実在の水野忠邦らも登場させる一方で、異界から現れる獣を登場させて戦うアクション部分もたっぷり見せて楽しませる。さらに、主人公たちが倒した妖怪を鍋などにして食べてしまう…という展開も斬新だ。
しかし、最も特徴的なのは、主人公の竜導が用いる武器が漢字というところ。漢字のルーツ、甲骨文字から矛や針、盾などを取りだし戦うという設定だが、漢字と甲骨文字についての考証は、10月に亡くなった白川静・立命館大学名誉教授の学説を引用している本格派だ。プロデューサーの竹田●滋は「アニメを見ることで現代の子供たちが、漢字の意味や力を知っていくきっかけにもなるのではないか。番組のスタート前に白川先生にご報告したときも喜んでいただいた」と話す。
また、豪華な制作スタッフ陣も話題を呼ぶ。脚本はヒットアニメ「鋼の錬金術師」の會川昇で、アニメーション制作のボンズも加わった。
今回は原作を持たないオリジナルアニメということもあり、「これまでにないジャンルを切り開きたい」という會川。主人公たちが最後に倒した妖怪を食べてしまうシーンを指して、「痛快アクションアニメを作ろうと思う半面、必ずしも退治する側が善ではないことを示しています。時代劇特有の血生臭さ、いわゆる“殺し”を、どういうふうに考えていくかについてもアニメの中で問いかけていきたい」と話している。
●=青の「月」が「円」
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